哺乳類に広がる鳥インフルH5N1、ヒトへのリスクは? WHO「備えなければいけない」

Martial Trezzini / Keystone via AP

 高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型の哺乳類への感染事例がここのところ相次いでおり、専門家が警戒を強めるなか、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は8日、「注意深く監視する必要」があると言明した。

◆ペルーでアシカが600頭近く死亡
 H5N1型の哺乳類への感染報告が相次いでいる。2022年10月には、スペインのミンク農場でH5N1に型よるクラスターが発生し、5万匹のミンクが殺処分となった。今年1月に発表された研究は、このミンク農場でミンクからミンク、つまり哺乳類から哺乳類への感染も起こっていたことを明らかにした。また、2月頭にはイギリスの保健当局が、H5N1に感染した野生のキツネとカワウソの例を報告。フランスでもネコの感染が報告された。

 さらに報道によると、ペルー環境省は今月、同国で少なくとも585頭のアシカがH5N1で死亡し、動物園のライオンも同じ理由で死亡したと発表した。

◆新型コロナの陰で続く鳥インフルエンザの流行
 新型コロナウイルスによるパンデミックと並行して、2021年秋から世界的に鳥インフルエンザの流行が続いている。日本でも2022年10月末から2月10日午前8時までに25道県で事例が発生。ほとんどがH5N1型高病原性鳥インフルエンザで、この間だけで防疫対策として約1363万羽が殺処分の対象となった。他国を見ても、アメリカでは2021年10月から現在までに47州で約5835万羽、フランスでは約2180万羽が殺処分になっている。

 H5N1型鳥インフルエンザ感染による鳥の致死率は90~100%とされる。家禽と違って把握は難しいが野鳥の被害も大きい。渡り鳥や海鳥の楽園であるスコットランドでは2021年夏から野鳥の数が減少し始め、至る所に鳥の死骸が見られるようになった。南アフリカのペンギン、バルカン半島のダルメシアンペリカン、イスラエルのツルなどの個体数減少も観察されている。ペルーでもペリカンやペンギンを含む5万5000羽の鳥の死亡が伝えられている

Text by 冠ゆき