「赤信号でも右折可」のアメリカで見直しの動き 車社会ならではの悪習?

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◆事故の原因に 歩行者と自転車のリスク増
 より問題なのは、「赤信号での右折」が交通事故の原因になっていることだ。カリフォルニア州バークレーのテリー・タプリン市議によれば、70年代に初めて右折が許可されてから、すぐに歩行者と自転車のリスクが増加したという。同氏が引用した研究では、歩行者の事故は6割増加していた。(SFGATE)

 交通系ニュースサイト『ストリーツ・ブログ・USA』によれば、全米で毎年約84人が赤信号で右折する車の事故で死亡しており、その半分以上が歩行者と自転車だという。土木技師のビル・シュルタイス氏は、アメリカにおける歩行者の死亡は年々増えているとし、歩行者の多い場所での「赤信号での右折」は見直しが必要だとしている。

 シュルタイス氏は、いくら歩きやすい道路などを整備しても、交通量が多い場所では「赤信号での右折」は事実上不可能だと指摘。見直すにも40年にわたる悪い慣行を改めるのは「事務処理の悪夢」であり、エンジニアはやりたがらないと述べ、安全よりも移動の便を優先した結果だと批判している。

◆すでに時代に合わない 各地で廃止続々
 SFGATEによれば、サンフランシスコのダウンタウンにあるテンダーロイン地区で50ヶ所の「赤信号での右折」を禁止したところ、歩行者と車両の接触事故が減少したという。各地で行われた実験でも同様の結果となっており、事故を減らそうと「赤信号での右折」を禁止する自治体が増えている。ニューヨークではすでに禁止されており、マサチューセッツ州ケンブリッジでは、75%の交差点で禁止している。首都ワシントン、ミシガン州アナーバーでも禁止が決まった。

 NBCボストンによれば、慣れてしまったルールを廃止することについては、ドライバーから不満も出ているという。しかしSFGATEは、そもそもの目的だったガソリンの節約など、特に車の電動化が進む現在は誇張され過ぎで、信号待ちの時間の節約も1〜4.6秒であると指摘。「赤信号での右折」はもはや説得力を失っていると見ている。

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Text by 山川 真智子