「第8波」を起こすか? 世界で注視されるオミクロン株の派生型
◆アメリカとヨーロッパで増えるBQ.1.1
別名ケルベロスとも呼ばれる「BQ.1.1」はBA.5の派生型で、9月末以来ヨーロッパとアメリカで増加傾向にある。BQ.1.1はナイジェリアで発生したと見られているが、最初に8月26日に日本の空港で確認され、感染者はエジプトからの入国者だった(フュチューラ・サンテ誌)。
フランスでは9月末にはBQ.1.1感染者は新規感染者の6%だとされていたが、10月頭には16%を占めるに至っており、その感染拡大の速さが警戒されている(シュッド・ウェスト紙、アンデパンダント紙 10/18)。
上述のプレプリントによれば、BQ.1.1もXBBと並んで、免疫回避能力と既存の治療薬への耐性が高い。また、BQ.1.1の感染者には下痢や嘔吐など消化器系に関するトラブルが多いと指摘する現場の声も上がっているが、データとしては確認されていない(ラ・サンテ・オ・コティディアン、10/17)。
◆アメリカで憂慮の声が高いBA.2.75.2
アメリカのスタンフォード大学臨床ウイルス学研究所のピンスキー博士は、「最近最も懸念しているのはBA.2.75.2だ」と述べている(ロサンゼルス・タイムズ、10/1)。「BA.2.75.2」は、BA.2.75に変異が加わったものだ。BA.2.75は一時期インドで急激に増加し、BA.5に取って代わるかと警戒されたが、BA.5ほど抗体を回避する能力がなく、インド以外ではBA.5を凌駕することはなかった。
まだそれほどアメリカに広まっているわけではないBA.2.75.2が注視される理由は、この変異ウイルスがほとんどの抗体の中和作用を回避できると見られるためだ(ル・モンド紙、9/19)。9月16日にbioRxivに発表されたプレプリントは、オミクロン株の3つの派生型(BA.2.75.2、BA.4.6、BA.2.10.4)に対する複数の抗体の中和能力に関するもので、これによれば、BA.2.75.2は抗体の中和作用を回避する能力が最も高く、血清抗体に対する耐性はBA.5の5倍と見られるという。また、同研究は新型コロナの感染を防ぐために投与される中和抗体薬エバシェルドの効果も、BA.2.75.2に対しては低いことを示唆している。