ヒジャブ焼き、髪切り抗議 道徳警察に逮捕された女性の死、イランの人権問題に火
◆道徳警察とは?
イランの道徳警察は1979年のイラン革命以降に組織された部隊だ。「女性を正しい道へと進ませる責任」のために取り締まりを行っている。緑のライン入りのバンで「公共の場所をパトロールし、ヒジャブ着用法やそのほかのイスラム教規則の適用をチェック」する。(TV5、9/19)
ヒジャブ着用有無のほかに、膝よりも短いコートや、ぴったりしたズボンや、穴の開いたジーンズ、派手な色の服装などが取り締まりの対象になる(フランス・アンフォ)。
元テヘラン特派員のジャーナリスト、サラ・サイディ氏によれば、そのほかコートのボタンが開いていたり、マニキュアが見えたりするのもアウトで、モラル警察のバンに見つかると女性が逮捕から逃れるのは難しいのが現実だ。道徳警察が起訴する女性の数は年に約1万6000人に上る。(TV5)
道徳警察に拘束された女性はたいてい警察署に連行され、犯罪者として写真を撮られ、家族の迎えを待つことになるが、なかには真夜中に外に放り出されたという証言もある。また暴力行為の対象になったという訴えも皆無ではない。(TV5)今年の7月には、拘留中に殴打された女性が内出血のため病院に運ばれるという事態も起きている(フランス・アンフォ)。
◆増加する抗議の声
多くのイラン人が今回のマーサ・アミニの死は警察による暴力が原因だと考える背景には、そのような事情がある。
抗議の声は17日に始まった。同日のマーサの葬式では、多くのイラン人女性がヒジャブを外し、「独裁者に死を!」と叫ぶ姿が見られた。イランの状況を考えれば、これがどれだけ勇気のある行動なのかわかるだろう。またマーサの故郷サッケズでの最初のデモの後、クルディスタン州の州都サナンダジュでも500人が抗議の声を上げ、こちらは、警察が催涙ガスを使用し、逮捕者も出る騒ぎとなった。首都テヘランでもいくつかの大学で抗議運動が開始されている。(20minutes紙、9/19)
Magnifique image, quel courage, quelle solidarité ! Lors des funérailles de #MahsaAmini, assassinée par la police des mœurs, les femmes de sa ville enlèvent leur #voile et crient : « mort au dictateur » ! #féminisme #Iran pic.twitter.com/KNFE3o4gvK
— Farid Vahid (@FaridVahiid) September 17, 2022
18日には、ほとんどすべてのイランの報道機関のトップページに、マーサ・アミニの悲劇が掲載された(20minutes紙、9/18)。マーサの名前のハッシュタグは280万近くツイートされ、文化界やスポーツ界の著名人も怒りの声を上げている。抗議の声は国外にも広がり、17日にはパリとベルリンで集会が行われた。アメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)もツイッターでイラン指導者らの「人権侵害の責任」に言及している。