「胎児入れると2人乗りだった」交通違反に妊婦が反発したワケ 中絶禁止で問題派生

Jason Janik / The Dallas Morning News via AP

 1973年、当時のアメリカ連邦最高裁が、女性が人工妊娠中絶手術を受ける権利がプライバシーの権利に含まれるという判決を下した。しかしその49年後の今年6月、トランプ前大統領が指名した3人を含む保守派判事によってその判決が覆され、現在多くの共和党州が妊娠中絶を全体的に禁止したり、厳格化するなどの措置を取っている。
 
 そのような状況下で、中絶禁止・厳格化州では、中絶手術を必要とする女性が中絶を認めている州に出向かなければならなかったり、妊娠により母体が危険にさらされている状況でも、訴追を恐れる医師が処置できなかったりするなどの混乱が起こっている。

 しかし混乱が起きているのは妊娠中絶手術に関することだけではない。各州が胎児を「1人の人間」と法的に認定することでも、さまざまな問題が派生してきたのである。

◆胎児は1人の人間か否か
 テキサス州では今月、出産間近な女性がHOVレーンと呼ばれる規定人数以上が乗車する車両のみ走行可能な車線を「1人」で使用していたことで、警察に275ドルの違反チケットを切られた。ABCニュースによると、ブランディ・ボトーンさん(32歳)は乗員2人以上の車両しか走行できないHOVレーンを走っていたという。普通の感覚なら、彼女の胎児はまだ生まれておらず1人の人間として数えられることはなく、彼女はHOVレーンを不正利用していたといえる。しかし同記事によると、テキサス州では妊娠6週間以降はほぼすべての中絶手術を禁止する法律が施行されており、また昨年には「受胎後の胎児を生命とみなす」とする別の法律も通過していた。ボトーンさんは「政治的なスタンスを取るつもりはありません」としながら、「でもこのようなことすべてが起こっているなかで、この赤ちゃん(胎児)は確かにもうすぐ誕生する人間なのです」と主張し、違反チケットを取り消す訴えを起こした。

Text by 川島 実佳