第7波の仏、マスクは「義務」ではなく「推奨」 人々は着用するのか?

パリの地下鉄(6月30日)|Michel Euler / AP Photo

◆「義務」から「推奨」へ
 ヨーロッパでは夏のバカンスは、多くの人が国境を越えて移動する時期でもある。それを見越し、6月27日にはフランスのブルギニョン厚生相、続いてボルヌ首相が、公共交通機関でマスクを着用するよう市民意識に訴えかけた(フランス・アンフォ、6/30)。

 さらに29日にはフランス国鉄CEOのジャン・ピエール・ファランドゥが「利用者と職員とに、駅と電車の中でのマスク着用」を呼びかけた。ワクチン戦略を担当したアラン・フィッシャーをはじめとする医師らも国民の「公徳心」に呼びかけ、マスク着用を推奨している。(フランス・アンフォ、7/1)

 パンデミックが押し寄せて以来、フランスではほぼ一貫してマスク着用は「罰金つきの義務」として課せられてきたものだ。つまり、第7波にして初めて、フランス政府は国民の「民度」に期待を寄せることにしたのだ。だが、国民はこの期待に応えられるのだろうか?

◆「マスクを外せ」という同調圧力
 昨年2021年の夏の状況を整頓しよう。フランスでは、2021年6月17日までは屋内・屋外ともにマスク着用が義務とされており、違反者には135ユーロ(約1万9000円)の罰金が科されていた。そのうち屋外でのマスク着用義務が解除されたのが昨年の6月17日だった。そのため昨夏は、マスク無しで歩ける解放感がそこここにみなぎっており、屋外でマスクを外さない人がいると、じろじろ眺める人も少なくなかった。言い換えると「マスクを外せ」という同調圧力を感じる場面が多かったのだ。

 今夏は、昨年と異なり、そういう同調圧力はほとんど感じない。マスクをしていても、していなくても、分け隔てなく接する人が明らかに増えた。だがその一方で自発的なマスク着用者もめっきり減ったと感じる。フランス健康局は、今年の5月16日(公共交通機関でのマスク着用義務が解除された日)時点では、公共の場で必ずマスクをつける大人が33.9%いたと記しているが、いま現在は筆者の印象では5%程度に過ぎないのではないかと思える。

Text by 冠ゆき