米、女性の権利の格差広がる 中絶禁止州の女性は他州で手術
アメリカ連邦最高裁は6月24日、1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆した。50年近く続いてきた中絶の権利を否定し、アメリカのみならず世界中に衝撃が走った。その判決とともに全米13州では自動的に中絶が禁止となり、ほかに9州も近日中に禁止の方向に進むことになる。この判決によって最も大きな影響を受けるのは、特定の州で望まない妊娠をして出産を強いられる女性である。世界一の経済大国であるアメリカだが、一部の人々、とくにキリスト教系保守派はいまも中世的思考を持ち、戦後アメリカが達成してきた進歩を覆そうとしているように見える。
今回の判決は、最高裁が中絶自体を禁止したわけではなく、憲法で保障された権利ではないと判断したもので、決定権を各州政府に戻したのである。そのため、現在のところほぼ民主党州で占められる残り28州では、いままでと変わらず妊娠中絶手術を受けることができる。しかしハフポストによると、この判決を喜んだ保守派のマイク・ペンス前副大統領は「中絶がすべての州で禁止されるまで、我々は休んではならない」と話しており、アメリカ全土で中絶を禁止する考えを持っていることを明らかにした。ペンス前副大統領は2024年の大統領選の出馬を狙っていると言われているが、民主党支持者から不人気なだけでなく、1月6日事件でトランプ支持者を敵に回したため、次期大統領になる可能性は低いと見られている。しかしペンス氏ではなくても、アメリカで今後共和党政権が誕生したら、「全国的な中絶禁止」に向かう可能性がある。
◆民主党州が中絶禁止州の女性を補助へ
今回の判決で、中絶が禁止された共和党州に住む女性たちは、隣接する他州に越境してケアを受けることが必要になる。そのような女性たちに対し、民主党州の政府は救いの手を差し伸べている。オレゴン州の地元紙オレゴニアン(電子版)によると、西海岸のカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの3州は団結して女性の生殖の権利を保護し、他州から中絶などの医療を受けに来る女性たちを助けると公表した。3州の周りにはアリゾナ州やアイダホ州などの保守州があり、それらの州から西部3州への女性患者の流入が見込まれているという。
またニューヨーク・タイムズによると、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は6月25日、同州では新しい広告キャンペーンやウェブサイト改善により、中絶に関して同州内で利用可能なリソースを明確にするほか、他州からの患者流入が予想される生殖医療クリニックに3500万ドルの資金を注入することを公表している。
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