イギリスではポリオは公式に2003年に根絶されているが、ロンドンの下水処理施設からポリオウイルスが検出され、新たな集団感染が起こるのではないかと懸念されている。感染すると深刻な障害や死につながる可能性もあり、ワクチン接種歴を確認するよう当局が市民に呼びかけている。

◆下水サンプルから複数発見　国内で進化
　ポリオは、感染者が排泄後に手をよく洗わず他人の飲食するものに触れたりすることで広がる。また、咳やくしゃみで移るケースもある。感染しても症状がなく気づかないことがほとんどだが、100人から1000人に1人が脊髄や脳の神経をウイルスに攻撃され、おもに足に麻痺を生じることがある。呼吸筋が侵されると死に至る場合もある。

　英スコッツマン紙によれば、これまでイギリスでは下水サンプルからポリオウイルスが単発で検出されることはあった。海外で経口生ポリオワクチン（生きたウイルスの毒性を弱めたもの）の接種を受けたイギリス人または旅行者が排泄し、その糞便中にワクチン由来ポリオウイルスが含まれていたためだ。しかし今回は2月から5月にかけて遺伝子的にリンクした複数のウイルスが、ロンドン北部と東部にサービスを提供する下水処理場のサンプルから検出された。

　今回のサンプルに含まれるウイルスは、イギリスで進化したものだとされる。もとは経口生ポリオワクチンに含まれていた弱毒化したポリオウイルスの株で、時間とともに変化し、「野生株」または自然に存在するウイルスに近い動きをするようになったものだという。（同）