封鎖解除とは名ばかり…「ゼロコロナ」に翻弄される上海の人々 国外脱出も
◆中国の扉の開閉、真意はどこに?
習近平国家主席が5月18日、中国国際貿易促進委員会の70周年の席で「中国の扉はより広く開かれる」と発言したり、李克強首相が「中国は、(中略)世界中の企業との交流と協力を強化する準備がある」と宣言したり、入国者の検疫隔離を14+7日から7+7日に減らすなど、ここのところ中国では、国を開く姿勢をアピールし始めている。しかし、肝心の経済問題を生んでいる大きな原因の一つにゼロコロナ政策があることは認めようとしていない。
上海に住む外国人のなかには、外国企業に投資を呼びかける中国の真意を疑う声もちらほらと聞こえる。本心では外国人も外国企業も徐々に排除して、自国のうちに閉じこもろうとしているのではないかという疑いだ。
◆ゼロコロナは感染対策ではなく政治手段
いずれにせよ、ゼロコロナは感染対策ではなく、政治手段だというのが上海在住の外国人大半に共通する認識だ。
ル・ヴァン・ド・ラ・シン(5/15)は、共産党幹部にとっては、ゼロコロナ政策は、党への忠誠心を量る踏み絵のようなものだと指摘する。目的は公衆衛生ではなく、ただ単に自分の首をつなぐために、必要以上に厳しい政策を取っているというのが大方の見方だ。
それを証拠に、ゼロコロナを掲げながらも、それに必要な肝心な策は取っていない。たとえば、ゼロコロナ政策強行のため、中国では大量のPCR検査が連日行われているが、中央政府は5月26日、国民保険は検査代を負担しないと発表した。そうなると検査代は地方政府の負担となるわけだが、とても払えない自治体が出ることは必至だ。
ゼロコロナ政策を押し通すには、効果の高いワクチンも必要だが、中国製ワクチンはもともと日本や欧米で用いられているものより効果が低いうえ、すでに主流になっているオミクロン株に適応したものはまだ作られていない。また、若い世代からワクチン接種を始めた中国では、高齢者のワクチン接種がいまだに進んでいないのだが、それを是正するキャンペーンも張られる様子がない。
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