感覚過敏の人に優しく、店舗の照明・音を抑制「クワイエット・アワー」広がる

Dean Drobot / Shutterstock.com

◆日本での試みは?
 全国的とはいかないが、日本にもクワイエットアワーの試みがないわけではない。たとえば、全国に展開するドラッグストアチェーンのツルハドラッグは、2019年10月から一部店舗において、クワイエットアワーを毎週1時間取り入れることを始めた。また、川崎市のイオンスタイル新百合ヶ丘は2019年7月に各種団体と連携し、1時間だけ一部売り場でクワイエットアワーを実施した。その後、川崎市はこれを元に当事者の感想や専門家の意見を取り入れ、「クワイエットアワー実施のためのサポートブック」を作成。理解促進を図るポスターとともに同市サイトで公開している。

 商業施設以外では、日本サッカー協会が、試合観戦できるセンサリールームを設置したり、日本財団DIVERSITY IN THE ARTSがクワイエットアワーを設置する企画展を開いたりという試みがされている。

◆自閉スペクトラム症の人に多い感覚過敏
 感覚過敏は、発達障害のなかでも自閉スペクトラム症(自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの総称)に多いと言われている。自閉スペクトラム症の発生頻度は「人口の1%」(厚生労働省e-ヘルスネット)とされる。

 治療はというと、e-ヘルスネットによれば、いまのところ「現代の医学では自閉スペクトラム症の根本的な原因を治療することはまだ不可能」で、「個々の発達ペースに沿った療育・教育的な対応が必要」とされている。そのような状況のなか、クワイエットアワーのような環境を整えることは感覚過敏に苦しむ人にとってささやかながらも助けとなるだろう。

 クワイエットアワーの導入は、直接的な恩恵以外にも、自閉スペクトラム症に対する一般の理解が広がるという大きな収穫をもたらすと思われる。クワイエットアワーの広がりを歓迎したい。

【関連記事】
パンデミックで傷ついた子供たち、心のケアが必要 ユニセフ報告書
「アスペ」日本における誤解、誤訳、誤用の実態
「自閉症の僕が跳びはねる理由」日本の少年の書籍が、英国でベストセラーに

Text by 冠ゆき