地球内部が予想よりはるかに速く冷えている スイス研究

Rost9 / Shutterstock.com

◆想定上回る熱伝導率を観測
 測定の結果、ブリッジマナイトの熱伝導率は従来の想定のおよそ1.5倍にも達することが判明した。今回の研究により、想定よりも早い段階でマントルの動きが弱まり、プレートテクトニクスが減速する可能性が示された。さらに村上教授によると、冷却が進むことでさらに熱放出に拍車がかかるのだという。ブリッジマナイトが冷やされると、ポストペロブスカイトという鉱物に変化する。ポストペロブスカイトはブリッジマナイトよりも熱伝導率が高いため、マントルの冷え込みが加速する可能性がある。

 村上教授はETHZのプレスリリースを通じ、「私たちの研究結果は、地球のダイナミクスの進化について新たな視点をもたらす可能性があります。水星や火星などほかの岩石惑星と同様、地球もまた冷却されており、想定よりも相当速く非活動的になりつつあることを示唆しています」と説明している。論文は1月15日付で、科学ジャーナル『アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ』に掲載された。

◆いずれは生命に適さない環境に
 地球が熱を失うことで、遠い将来には生命に適さない環境となることも起こり得る。米NBC(1月20日)は、「この惑星(地球)のコアは数十億年も熱を失い続けているが、ひょっとすると『想定よりも急速に』失われており、地球上の生命の終えんを早めるかもしれない。もっとも、当面の話ではないが」と報じている。現在はマントルの対流によって磁場が発生しているが、冷却によって対流が弱まれば磁場が失われ、有害な宇宙線が地表に降り注ぐことになる。「そうなれば、地球は不毛で生存に適さない岩の塊となる」とNBCは述べる。今回の研究では具体的な時期に触れていないが、参考までに従来の研究として2013年、英イースト・アングリア大学のアンドリュー・ラシュビー教授が予測を示している。それによると地球が生命を育める期間は、あと17.5億年から32.5億年ほどとのことだ。

 米USAトゥデイ紙(1月19日)も、研究結果が「この惑星に人間がどれほど長く住めるのかという疑問を投げかけている」と報じた。ただし村上教授は同紙に「数億年、あるいは数十億年」の時間軸の話だとも述べ、喫緊の身の危険を示すものではないとも補足している。

 研究により、気の遠くなるような遠い未来の地球の姿の可能性が示されることとなった。

【関連記事】
太陽が死んだ後、太陽系はどうなるのか? 6000光年先の惑星が示すもの
ヨーロッパ深部に眠る「大アドリア大陸」とは 1億年前に消えた幻の大陸
あわや衝突、ニアミスしていた小惑星 接近も気づかず 都市消滅の危険

Text by 青葉やまと