女性「家事、育児の大半をやるのは自分」 米世論調査

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 いつか子供ができたときは、オムツ交換、掃除や洗濯、料理、家族の予定や活動のやりくりなど、夫婦2人でなんとか家事を平等に分担していこう。子供を持たない夫婦の多くは、そう考えている。

 しかし現実はそれほど甘くはない。少なくとも、母親たちにとっては。

 シカゴ大学ハリス公共政策大学院とAP通信公共問題研究センター(NORC)が実施した新たな世論調査によれば、女性は一般的に家庭内での家事をより多く率先して行おうとする傾向がある一方で、子供を持たないアメリカ人に限っていえば、自分が両親から聞かされた家事分担の実情に比べ、自分自身はパートナーと2人でより平等に家事を分担していけると楽観している。回答者の年齢などの要素を考慮しても、やはりこの結果は変わらない。

 この世論調査では、家庭内の8つの家事に関して質問を行った。その問いに対し、母親たちの35%が、8つすべての家事に関してパートナーよりも自分の方が多くを担っていると答えた。一方、同じ問いに対して同じ答えを返した父親たちの割合は3%にとどまった。たとえば「子供の送迎」について「完全な、あるいはほとんどの責任がある」と答えた母親たちは約半数であるのに対し、同じ回答をした父親たちは約25%だった。

 それとは対照的に、実際には子供を持たない男女の大多数は「子供ができたら、送迎、オムツ交換、夜中に目を覚ました子供への付き添いなどを平等に分担する」と回答した。

 また、誰が家事の大部分を行っているかについては、母親たちと父親たちの間で見解の相違があった。たとえば「夜中に目を覚ました子供をあやす」ことに関して「母親とそのパートナーがどちらも等しく子供をあやしている」と回答したのは母親たちの21%。それに対して、同じ回答をした父親の割合は49%だった。では実際にはどちらの言い分が正しいのだろうか?

 シカゴ大学ハリス公共政策大学院で准教授を務めるヤナ・ガレン氏は「実際にその作業にかけた時間のデータを見る限りでは、女性側の方が正しいと言えます」と話す。

 人生においては、念入りに練った計画がその通りにいかないこともある。生後4ヶ月の乳児の母であるリアナ・プライス氏(35)は、新型コロナウイルスのパンデミックの最中に「待ちに待ったサプライズ」として子供を授かった。化学療法治療を受けているときに妊娠合併症の症状が出た同氏は、その後のなりゆきで2021年の1月に仕事を辞めた。

 プライス氏は「いろいろな事が劇的に変化しました。あまりにも突然すぎて、計画も何もあったものではありませんでした」と語る。夫婦はフルタイムの仕事を続ける意向を持っており、正規の看護師として働く同氏は産休を取る計画だった。しかし実際に子供ができてみると、プライス氏は仕事を辞め、夫婦で貯金を取り崩して生活するようになった。

 それでも育児に関しては、夜中に目を覚ました子供をあやすなどの育児を平等に分担しているという。同氏は「私が母乳をあげていた時期には、夫の方が真夜中に起きて母乳をあげるというのはそもそも無理な話でした。いまは粉ミルクなので、交代で夜にミルクをあげています。でも、夫は日中は在宅勤務で仕事をしていますし、出張で出かけることもあります。夫が留守のときには、もちろん私がすべてをやります」と語る。

 専門家によると「より多くの家事や育児を負担しているのは自分」という回答が女性の側に多い理由としては、多くのケースにおいて女性の方が実際に多くの家事をこなしているという事実のほかに、男性側が現実に行われている家事のすべてを把握しきれていないことが挙げられるという。具体的には、家族の活動を計画して予定を組む、あるいは子供に対する感情的サポートを提供する、などといったことだ。

 今回の世論調査では、母親たちの57%が、子供に対する感情的サポートの「すべて、またはほとんど」を提供しているのは自分だと回答している。一方、自分のパートナーがその役割を担っていると回答した母親は、わずか1%に過ぎなかった。対照的に、子供への感情的サポートを提供しているのはおもに自分だと回答した父親は10%、自分のパートナーがそれを担っていると回答した父親は24%だった。

 新型コロナウイルスのパンデミックが女性に与えた影響に関しては、ここまですでに数多くの議論がなされてきた。「子供の世話や高齢の両親の世話を理由に、多くの女性が仕事を辞めたり減らしたりした」というのもそのひとつだ。猛威を振るったパンデミックの結果、アメリカ各州において経済活動が規制され、全米で数千万人が職を失った。その後にアメリカ経済は急速な回復を見せ、雇用側は過去最大規模の求人を行った。しかし、実態としては本人の希望によるかそうでないかにかかわらず、多くの女性の職場復帰が遅れている。

 アメリカ合衆国国勢調査局が行った分析によると2020年春の時点で、学齢期の子供を持つ母親たち約350万人が失職、休職、あるいは労働市場から完全に姿を消した。そしてその女性たちの多くが、その後仕事に復帰していない。コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーが最近出したレポートによると、過去1年間に仕事を辞めるか、仕事に対するコミットメントを減らすことを考えたことのある女性は3人に1人にのぼる。これに対して、パンデミックの初期に離職を考えていた女性の割合は4人に1人だったという。

 ガレン氏によると、パンデミック中に起きたもうひとつの変化として、これまで以上に多くの仕事がリモート化され、在宅勤務可能な仕事が増えたことが挙げられるという。同氏は「そのこと自体は、働く女性にとってはプラスの変化だと私は思います。なぜなら、一般に女性たちはより高い報酬が約束されたとしても、出張のある仕事や家を長時間留守にする仕事に就きたがらない傾向があり、これは以前からある潜在的な大きな問題でした。つまりある意味では、このパンデミックが女性にとってより好ましい労働条件へのシフトを加速させ、女性が選べる仕事の数が増えたとも言えるのです」と語る。

 ここで言う労働条件とは、たとえばフレキシブルな勤務時間であったり(それが可能な職種の場合には)、リモートワーク化であったりする。今回の世論調査によると、子供を持つかどうかを考える際に女性は男性よりも仕事のフレキシビリティを重視する傾向にあり、それが重要だと答えた女性は74%、男性は66%だった。

 人々が子供を持つことを思いとどまる理由は、何も家事の責任分担の問題だけではない。男性(子供を持つ男性を含む)との比較において、給与面でもキャリアアップの観点からも子供を持つことによって女性のキャリアが不利になることに関しては、すでに数多くの文献で語られている通りだ。

 今回の調査で「子供を持つことが、現在の仕事を安定して続ける上での支障となる」と回答したのは、男性では36%、女性では47%。とりわけ30歳未満のアメリカ人において、それより高い年齢層よりもその回答の割合が高かった。

 ウェストバージニア州在住のエイミー・ヒル氏(31)は、ダンスパーティーや結婚式などのイベント向けのメイクを仕事にしている。安定した仕事だが、フルタイムではない。同氏は夫よりも多くの家事を実際にこなしているが、自宅での分業体制には満足しているという。夫は自宅から遠く離れた炭鉱にて16時間シフトで働いている。

 ヒル氏は「一緒になった当初から、夫は炭鉱で働いています。彼と一緒にいる時間が長すぎないことが、むしろプラスになっています。彼が家を離れると、恋しく思いますからね。それと彼のタオルのたたみ方は、私好みの折り方じゃないんですよね」と笑いながら語る。

By BARBARA ORTUTAY AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP