ヴァージル・アブローの死:「新しい追悼」と、そこに表れた素のアブロー

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◆SNS時代の追悼
 アブローの死は、約700万人のフォロワーを持つ彼の公式インスタグラム・アカウントの投稿にて伝えられた。投稿は「ヴァージルは自身のものづくりに対する献身と、ほかの人々のために扉を開き、アートとデザインの分野がより平等なものになるための道筋を作るという使命に突き動かされていた」とある。また「自分がやっていることは、すべてが17歳の自分のためだ」というアブローが幾度となく口にしていたとされるコメントが付け加えられている。

 彼の死去のニュースを受けて、アブローと親交のあった人々は追悼の意を表明した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ヴァージル・アブローのDM(ダイレクト・メッセージ)のスクリーンショットを公開するやり方は、新しい追悼の形だと報道。プライベートなやりとりを公開することは普通はタブーだが、著名人であろうとなかろうと悲しみを分かち合う方法として一般化しつつあると伝えている。プライベート・メッセージの公開は残された人々が故人との思い出を共有するきっかけになる。

 一方、「ヴァージルからのテキスト・メッセージ」というニューヨーク・タイムズの記事では、アブロー自身が積極的にDMを活用し、コラボレーション・パートナーを開拓したり、友人たちのキャリアを応援したりしていたことが伝えられている。記事内で公開されている知人・友人たちに向けられた彼のDMは、前向きで未来志向のメッセージに溢れている。作り込まれたものが溢れるSNSにおいて、公開されることが前提とされていないプライベート・メッセージは、故人の人柄を表すよりオーセンティックなものとして、その価値が高まっているのかもしれない。

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Text by MAKI NAKATA