オミクロン株、感染力の強さを警戒すべき理由

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 南アフリカが11月末、最初に特定したオミクロン株は、その後デルタ株を駆逐する勢いで増えつつあり、欧州で来月1月半ばにはデルタ株にとってかわるとも見られている。これまでの教訓を生かすように、日本を含め多くの国は、南アフリカの発表を受け迅速な対応を取ったが、オミクロン株の脅威はまだとても消えたとは言えない。それはなぜか?

◆オミクロン株の重症化率と感染力
 オミクロン株については、当初より感染力が強いことと、その反面、症状は比較的軽い場合が多いことが指摘されてきた。欧州医薬品庁(EMA)も世界保健機関(WHO)もつい先ごろ同様の見解を示したところだ。このことから、感染力が高くても重症化しないのであれば、オミクロン株の出現でパンデミック収束に近づくのではないかという説も一部で上がったくらいだ(フュチューラ・サンテ、12/6)。

 だがオミクロン株感染者全員が軽い症状で済むわけではなく、すでに英国ではオミクロン感染者の死亡が少なくとも1人確認されている。

◆感染力が強いと死者も急増
 また感染力の強さは大いに警戒すべき点だ。感染力の強いウイルスは、致死率の高いウイルスよりもはるかに多くの被害を生む可能性があるからだ。ル・モンド紙(12/14)はこれについて英国の疫学者アダム・クチャルスキ氏のツイートをもとに説明している。それによれば、実効再生産数1.1、致死率0.8%、世代時間6日、感染者1万人という状況を想定した場合、30日後の死者は129人という計算となる。それよりも致死率が50%高い場合は30日後の死者数は193人。一方、致死率が0.8%のままであっても、感染力が50%強い場合は、30日後の死者数は978人となる。

 この試算を見ると、致死率よりも感染力の増加が犠牲者数をぐんと増やすのは一目瞭然で、「感染力は強いが、致死率が高いわけではない」からといって安心できるわけではないことがよくわかる。

Text by 冠ゆき