抗体量がいくらあれば感染を防げるのか 仏病院が8758人調査

Jean-Francois Badias / AP Photo

 9月16日、新型コロナウイルス感染リスクと、体内の抗体価との関係を記した研究が、『ジャーナル・オブ・インフェクション』に発表された。これはフランスのトゥールーズ大学病院のウイルス学研究所が調査したもので、感染リスクのしきいとなる抗体価(中和抗体の量)を初めて示したものだ。

◆感染と抗体価の関連に注目した最初の研究
 ワクチン接種が進み、国内の医療機関のなかにもIgG抗体価の検査を提供するところが増えてきた。だが、いまのところヒトの体内でどれだけの抗体価があれば発症や重症化を予防できるかははっきりとは明らかになっておらず、検査結果は「抗体がある(陽性)」か「ない(陰性)」のどちらかで伝えられるのが通常だ。そのようななか発表されたこのフランスの研究は、感染を予防する抗体価の具体的な数値に初めて言及したもので注目されている。

◆抗体価に関するこれまでの研究
 新型コロナのワクチンを接種すると、体内には中和抗体が産生される。この抗体は、新型コロナ感染から身を守るのに役立つ。新型コロナの抗体価についてはこれまでも多くの研究がされてきている。たとえば、ファイザーワクチンの場合、抗体価は「2回目のワクチン接種後に(中略)大幅に上昇」(藤田医科大学、8/25)し、その後時間とともに低下していく。藤田医科大学は、接種から「3ヶ月後の抗体価の平均値は、2回目接種後に比べて約1/4に減少」したとまとめる。

 抗体は、ワクチン接種だけでなく、感染によっても産生されるものだ。だが、感染による自然免疫応答は個人差が非常に大きいとされ、専門家によれば、「一般的に、感染が重度であればあるほど免疫も強くつく」ものだ(フュチューラ・サンテ、9/25)。新型コロナの場合、無症状感染では抗体がわずかにしか産生されないケースもあり、2~8.5%に関してはまったく産生しなかったと報告されている(フュチューラ・サンテ、2020/6/26)。また、オックスフォード大学の研究によれば、有症状の患者であっても26%は、感染後6ヶ月で免疫応答を示さなくなるという。

Text by 冠ゆき