オアフ島でワクチンパスポート 60日試験実施 観光客も対象

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 2020年、アメリカ本土で新型コロナウイルスが猛威を振るっていた際、ハワイ州では観光客の来訪を14日間の自粛義務で制限し、ロックダウンやマスク着用令など、厳しい感染予防対策で乗り切った。本土や外国から遠く離れた島々で構成される地の利もあり、感染者数は過去1年以上全米最低レベルに留まっていた。昨年末からは陰性結果をベースとした観光客受け入れ、経済も順調に回復。今年に入ってからはワクチン接種者も増えて、新規感染者数は徐々に減っていった。ジョンズホプキンス大学の統計によると、今年6月24日の7日間平均感染者数は42人と低い数字で、今後の見通しは明るいように思えた。

 しかし7月に入り、感染力の強いデルタ株がアメリカ国内で流行し始めると、ハワイでも再び感染者数が増加。7月中旬頃からはさらに急激な増加を見せ始め、8月に入ると感染者が爆発的に増えた。前出の統計によると8月1日の7日間平均は413人で、下旬には新規感染者数が1000人を超える日も出始めた。同統計によると、9月1日時点の7日間平均感染者数は852人となっている。

◆オアフ島で「ワクチンパスポート」制度開始
 今回のハワイの感染者増加の原因は、ハワイに来た観光客ではない。ホノルル・スターアドバタイザー紙(電子版)によると、デヴィッド・イゲ州知事は、現在のハワイ州における感染拡大は、州民が夏休みにアメリカ本土など州外に旅行に出かけて感染し、ウイルスをハワイに持ち込んで、家族や友人など近い人々に感染が広がった「コミュニティー感染」がほとんどだと語っている。市中感染ではないうえ、ワクチン接種率も州民全体の63%まで上がっている現在、これまでのような外出一部禁止令を発しても効果がなさそうだ。州や各郡政府でもどのように対処するべきか考えあぐねていたようで、集会人数が屋内10人以下、屋外25人以下に規制された以外、これまでとくに対策を打ち出していなかった。

 だが、8月31日になり、ホノルルのリック・ブランジアーディ市長(オアフ島全域)は、「セーフ・アクセス・オアフ」という新プログラムの実施を公表。ホノルル・スターアドバタイザー(電子版)によると、オアフ島では9月13日より、レストランやバー、屋内のジム、エンターテインメントおよびレクリエーション施設(映画館や美術館、ゲームセンターなど)への入場時に、ワクチン接種済み証明、または48時間以内の新型コロナウイルス検査陰性証明書が必要となる。これは名を変えた実質的な「ワクチンパスポート」制度で、もちろんオアフ島の住民だけでなく観光客にも適用される。

 ブランジアーディ市長は、同プログラムを試験的に60日間実施し、データ収集後にプログラムの効果を評価するとしている。また、現在ワクチン接種が認められていない12歳未満の子供はプログラムの対象にならない。60日間実施後、感染者数の減少が見られない、または多くのビジネスが協力をしない場合、オアフ島ではワクチン接種義務化に動くという。

Text by 川島 実佳