イゲ州知事「ハワイ観光来ないで」 感染者の大半はハワイ州民
◆親族間などコミュニティ感染が7割
ハワイなど離島で疫病の感染拡大が起こると、真っ先に疑われるのは州外から来た観光客だ。しかし今回の感染拡大は観光客が原因ではなく、州外に旅行して感染し、ハワイに帰ってから感染源となったハワイ州民である。観光客の大多数はハワイ到着前にワクチンを接種しているか、または新型コロナ検査の陰性結果を所持している。しかも、いまのハワイではとくに、観光客が地元住民と密に接するという状況はほぼないため、観光客から地元住民にウイルスが感染して広がったというシナリオは考えにくい。
ホノルル・スターアドバタイザーによると、ハワイ州のデヴィッド・イゲ州知事は、感染拡大による規制によって、レストランなどで接客可能な人数が限られていることなどから「いまはハワイを訪れるのに良い時期ではない」と言い、観光客にハワイに来ないよう勧めた。しかし同知事は同時に、感染拡大原因の大半は、ハワイ州外で感染して帰宅し、地元コミュニティーで感染を広げたハワイ州民であるとも述べている。
ハワイ保健局によると、今回の感染拡大は親族や友人間などの「コミュニティ感染」が68%を占めているという。その他25%が不明または調査中、6%が住民の旅行関連、住民以外の旅行者関連はたったの1%である。おそらく、他州・外国に行ったハワイ住民がウイルスに感染して、その後コミュニティ感染が広がった、あるいは他州・外国からハワイの親族を訪れた人を介して広がったというシナリオだろう。ハワイでは文化や住宅事情により、3世代にわたる大家族が一つ屋根の下で暮らすことも多いのである。
◆ハワイ先住民の感染者が最多に
同局の統計によると、今回の感染拡大で最多の感染者を出しているのがハワイアン系(ハワイ先住民)で、感染者全体の23%を占めている。次に白人系で20%、フィリピン系が19%、サモアやミクロネシアなど「パシフィック・アイランダー」と呼ばれる太平洋諸島出身者が16%と続いている。ハワイ州人口の15%を占める日系人の感染者数は全体の6%で人口比率にすると最も少ない。「ハワイ」と一口に言っても、各民族で独特の慣習やライフスタイルがあり、ハワイアンや太平洋出身者、フィリピン系は民族のコミュニティー内における人間関係が非常に濃い傾向がある。民族別感染者数の大きな違いは、そんな文化の違いから来ていると言えそうだ。
しかし、もちろん文化の違いだけではない。ハワイではワクチン接種率も民族間で大きく異なっている。ホノルル・スターアドバタイザー紙(電子版)によると、ハワイでは日系人の71%、白人系の68%がワクチン接種を受けているが、その数がハワイアンは49%に落ちるという。同記事ではまた、フロリダのディズニーワールドに家族旅行をした際に感染し、両親ともに亡くなり、子供たちだけが残されたハワイアンの家庭を紹介している。
感染拡大がこのまま続く場合、ハワイではまたロックダウン状態に戻る恐れがあるが、ワクチン接種が進み、市中感染が少ない現在、以前のように全員が同じように自粛をして、観光客を締め出しても意味がない。それではワクチンをすでに接種した人にとっては、接種した意味がなくなってしまうからだ。ハワイ州政府や地域のリーダーは今後、感染拡大防止策をはっきりと打ち出し、ワクチン接種に対する抵抗感がとくに強かったり、パンデミックに関する誤情報を信じていたりするコミュニティーのなかで、接種推進努力を行っていく必要があるだろう。
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