米でブレイクスルー感染増加 ブースター接種開始

Matt Stone / The Boston Herald via AP

◆免疫不全患者へのブースター接種開始
 インフルエンザワクチンと同様に、新型コロナウイルスワクチンは接種を受けたら感染しないというわけではないが、接種を受けることで入院治療が必要なほど重症化することは稀であると言われている。しかし、少ないながらもワクチン接種者にも死者が出ていることから、アメリカでは懸念が広がっている。

 そんななかで、広く使用されているファイザー製の新型コロナワクチンが、6ヶ月間を過ぎると効力が次第に落ちてくることが明らかになった。NBCニュースによると、同社のワクチンは、接種後約6ヶ月間の重症化予防効果は97%であるものの、発症予防効果は6ヶ月間で96%から84%まで落ちるという研究結果(査読・雑誌掲載前)が公表された。つまり、昨年12月に始まったワクチン接種で、医療関係者など優先的に接種を受けた人々の場合、接種時からすでに8ヵ月経過しているため、それよりさらに落ちている可能性がある。

 同記事によると、ファイザー社のCEOは数ヶ月以内にブースター接種が必要と話している。USAトゥデイ(電子版)によると、アメリカの食品医薬品局は8月2日、まず先に同国人口の約3%を占める重度の免疫不全患者は、ファイザー社のブースター接種を受けることが可能であると述べた。今後は、今年初頭からワクチン接種が始まっていた高齢者などにもブースター接種が推奨されることになりそうだ。

◆ブースター接種に別のワクチン選択も
 現在FDAにブースター接種が認められているのはファイザーとモデルナのワクチンだ。CNBCは、メイヨークリニックによるブレイクスルー感染の研究結果として、モデルナのワクチンのほうがファイザーのワクチンよりも有効性が高いと報道している。同研究によると、モデルナのワクチンはファイザーよりも60%ブレイクスルー感染の危険性が低かったという。またCNBCの別の報道によると、有効性を高めるために別々のワクチンをブースター接種する人々が増加している。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も1回目はアストラゼネカ製、2回目はモデルナ製のワクチンを接種したという。またイタリアや韓国でも別々のワクチンを1回ずつ計2回接種することを許可している。同記事によると、1回接種でアメリカでは人気のあるジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンも、元のウイルスと比べ、デルタ株やラムダ株に対して効果が低いという研究結果が出ているという。現時点で利用可能なワクチンにはそれぞれ利点と欠点があるが、組み合わせることで有効性がアップするならば、今後はブースター接種に別のワクチンを選ぶことが一般的になるかもしれない。

【関連記事】
ワクチン接種拡大図る米国 インフルエンサー起用や企業による義務化も
米、デルタ株猛威でワクチン接種が増加傾向
「ファイザー製は危険と広めて」インフルエンサーに謎の仕事依頼 ちらつくロシアの影

Text by 川島 実佳