なぜイギリスで感染減少? 先月に規制解除 「集団免疫」には異議も
◆データに不備? 集団免疫は理由として除外
イギリスでは成人の72%以上が2回目のワクチン接種を終えており、国家統計局は成人の92%がワクチン接種、または感染によって抗体を持っていると推定している。これが感染減少の理由ではないかと多くの人が指摘している。(ABC)
しかし、キングス・カレッジ・ロンドンのティム・スペクター教授などの専門家は異を唱える。同教授が共同開発した世界最大の新型コロナ研究アプリZOEのデータでは、1日の感染者は6万人ほどで高止まりしている。よって減少に転じたという政府発表のデータが怪しいと見ている。感染減少は以前のフル・ロックダウン後に見られたものよりずっと早く起こっており、2日間で30%も減少した日もあるという。ウイルスが突如諦めたとは考えられず、何か別の説明がいるようだと同教授は述べている。(スカイ・ニュース)
エドモンズ氏も、ワクチンや自然感染による集団免疫が、ウイルスの拡散を防いでいるとは見ていない。多くが2回接種を終えているとはいえ、16歳~24歳の人々はほとんど接種を完了しておらず依然として感染しやすい。また2回接種した人や自然感染から回復した人のなかにもデルタ株のブレイクスルー感染が起きているはずだ。何日にもわたり感染が減少している原因は、さまざまな理由の組み合わせの可能性があるとしている。(ネイチャー)
◆考えられる原因は? 今後の状況に注目
原因の一つと思われるのがサッカーのユーロ2020だ。多くの人がスタジアムやパブ、バー、個人宅に集まり7月中旬に感染が急増したため、現在の感染減少が顕著に見えている可能性があると指摘されている。さらにその後、国民保健サービス(NHS)の接触者追跡アプリによって多くの人が濃厚接触者となり、自己隔離を余儀なくされたため、ウイルスの拡散が抑えられたとも考えられる。(ネイチャー)
また、エドモンズ氏とスペクター氏は、夏休みの学校閉鎖が大きな要因と見ている。学期中、生徒や教師は定期的に検査を受けるが、夏休み中は検査を受けないうえに、校内での感染も減少する。(ABC、スカイ・ニュース)
ネイチャーによれば、夏休みは7月23日ごろから始まったが、年齢が上の生徒たちは試験が終わって早めに休みに入っており、その影響の可能性もある。そのほか、天気が良くなり外での活動が増えたことなども理由として考えられるという。
制限が緩和されたことで、人々の行動がどのように変わるのか、またその結果、感染がどのようになるのかは現時点ではわからないとエドモンズ氏は述べる(ネイチャー)。イギリスの8月5日の新規感染者数は1週間ぶりに3万人を超えた。今後発表されるデータが気になるところだ。
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