空港での超特急PCR検査は4万6千円 海外旅行者が増加のスイス

(C): Flughafen Zürich AG

◆ナイトクラブ再開がPCR検査の予約に影響
「今夏は国外旅行ができて嬉しい」という反面、旅行のためにPCR検査を受ける人たちにとっては費用がかさむ。PCR検査を受ける人たちとは、ワクチン接種の予約が間に合わなかった人や、接種を受けない、またはもう少し様子を見てから決めるという人だ。

 スイスでは、新型コロナの症状がある場合や感染者と濃厚接触した場合などはPCR検査の費用は国が負担するが、旅行の陰性証明のためにPCR検査を受ける場合は自己負担となる。

 連邦保健局が見積もったPCR検査の公式費用は、約1万9千円(156フラン)。しかし、この価格は州により差がある。たとえば、ある州の州立病院では、医師とのコンサルテーションが含まれるため2万4千円(200フラン)だ(スイス放送協会)。チューリヒ市内でさえ、公的な新型コロナ検査センターや薬局やクリニックでの価格は一定ではない。スイスのPCR検査費用は、西ヨーロッパも含め他国に比べると高い。価格指導の専門家Manuel Jung氏によると、スイスでは外部の検査機関(ラボ)での分析費用が他国よりも高いことが要因だという(20ミヌーテン)。

 日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、PCR検査および抗原検査は、7月初めから中旬にかけて、チューリヒの新型コロナ検査センターや薬局での検査の予約が非常に取りにくくなった。6月終わりから政府の感染対策が緩和され、スイスでは1000人以上の大規模イベントやディスコ、ナイトクラブが再開したが、入場にはPCR検査または抗原検査の陰性証明が必須であるため、人々が証明取得のために押し寄せた(ワクチン接種証明があれば、検査不要)。これに国外旅行のために検査を受ける人たちが加わり、チューリヒの一部の薬局では深夜まで検査に追われたという。

◆空港の超特急サービスだと「約4万6千円」
 国外旅行者には、空港に設けられた新型コロナ検査センターも便利だ。チューリヒ空港では空港メディカルセンターと薬局でも検査が受けられるが、新型コロナ検査センターだと、2時間半から3時間という短時間で結果が得られたり、価格が安かったり、鼻からではなく唾液からの採取もあるのでとくに子供(家族連れ)には好都合だ(唾液採取タイプが受けられる所は少ない)。新型コロナ検査センターは、Test&Fly、flyender、viselioの3社が提供している。

 PCR検査についてみてみよう。Test&Flyは結果取得まで5時間待ち、2時間半待ちのサービスのほか、約3万4千円(280フラン)の1時間待ちサービス、約4万6千円(380フラン)と値は張るものの超特急の30分待ちというサービスもある。

 flyenderは5時間待ちもあるが、3時間待ちだと大人は約2万6千円(219フラン)、18歳未満は約2万円(169フラン)で、家族割引があるという。筆者の知人は、今年3月に夫婦と小学生の子供2人で国外旅行した際、flyenderを利用した。そのときは一人一律200フランだったというから、4人で約9万7千円の出費になった。夫婦いわく「子供たちには唾液からの採取がよかったので、空港の検査センターを選びました。事前にクリニックで検査すれば多少安かったのですが、出発当日に結果が出るのはいいなと思いました」とのこと。

 viselioは6時間待ち、そして翌日待ちで1万4千円(119フラン)と安いサービスがある。スイス放送協会によると、viselioの1万4千円はスイスで最安値だという。低価格の秘密は、分析費用を抑えるために、夜、顧客の検体を車で5時間以上離れたチェコの検査機関に運んでいるからだそうだ。viselioはほかに国内4ヶ所に検査センターを開いており、安さに魅力を感じる人も多い。

 公式費用の約1万9千円より高くしている空港の検査センターへの批判も聞かれるが、需要は確実にある。新型コロナ検査のビジネスは、感染拡大が落ち着くまで潤うのだろう。

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Text by 岩澤 里美