洪水期入りの中国、97の河川で警戒水位超え 一部住宅地は冠水

昨年8月に重慶市で発生した洪水の様子|dyl0807 / Shutterstock.com

◆三峡ダムは安全性を強調
 三峡ダムについて環球時報は、「三峡ダムのプロジェクトは昨年以上の洪水に対応する能力を持つと見られており、『歪み説』を流布する必要はないと監視組織は述べた」と報じている。三峡ダムについては昨年7月ごろ、巨大な堤体の中央付近で貯水の重みによる歪みが生じていることが確認された。決壊の可能性が中国内外で報じられると、当初の設計の許容範囲内であると政府は説明し、安全性の強調と噂の打ち消しに追われた。今季について水利省関係者は、6月10日時点で145メートルというあらかじめ設定された目標水位があり、その範囲内に収まるとの見通しを発表している。

 しかしながら、温暖化により水害が悪化傾向にあるとの指摘も出ている。自然科学関連のニュースを伝えるネイチャー・ワールド・ニュース誌(5月26日)は、中国の洪水期入りについて、「複数の気象機関が、地球温暖化でさらなる異常気象が加速していると警告している」と述べる。国立気象センターの副所長が4月下旬、「酷暑や洪水など、地球温暖化によって中国は異常気象に対していっそう脆弱になった」と現地報道機関に明かしているなど、年々状況がゆるやかに悪化しているとの捉え方が中国国内でも出ている。

◆各地で当局が対応に着手
 洪水シーズンの到来を受け、各地では関係当局が対応に追われている。環球時報は、広東省では4段階中最も低いレベル4の対応体制を敷き、洪水リスクへの備えを強化したと報じた。湖南省では、地元水利局が長江水路部と共同で臨時の監視訓練を行った。湘江下流で堤防が決壊し、都市部が冠水に至る状況を想定したシナリオだ。

 洪水期入りに先駆け、すでに救命ボートやドローンなどを活用した救助訓練が中国全域で実施されている。SCMP紙の動画では、ドローンを使って救助用の浮き輪を届ける一場面を確認できる。一方で中国非常事態省によると、昨夏の洪水で被害を受けた人々は3700万人に上る。今年も水害への備えが欠かせない状況だ。

【関連記事】
中国・三峡ダム崩壊説が再浮上 記録的大雨で不安高まる
中国プライドの三峡ダム崩壊? 政府は噂否定も、住民不安
インド、落雷で毎年2000人以上死亡……犠牲者が多発する理由

Text by 青葉やまと