没後200年、いまもフランスを揺るがす「英雄」ナポレオン

ナポレオンの棺を前にするマクロン大統領夫妻(5月5日)|Christophe Petit Tesson / Pool via AP

◆マクロン仏大統領のスピーチ
 5月5日の式典でマクロン大統領が行ったスピーチは、上に挙げた例を含むナポレオン・ボナパルトの功罪両方を織り込んだもので、何よりも「歴史と向き合う」ことの大切さを前面に出してみせたものだ。「ナポレオン・ボナパルトは、我々(フランス人)の一部である」と考え、「現在の考えに合わないからという理由で、過去を消し去ろうとする人々に屈服しない意思」を表明した。(20 minutes、5/5)

 スピーチのあと、マクロン大統領は、ナポレオンの子孫のひとりであるジャン・クリストフ・ナポレオン氏立ち合いのもと、アンヴァリッドのナポレオンの墓に、亡くなった時刻17時49分ちょうどに花輪をささげた。

◆5月10日は奴隷制度と廃止の記念日
 この式典ニュースに対し、ネットでは「マクロンはもうじきナポレオンを気取りだすさ」といった反マクロン大統領のコメントや、「とんでもない! 奴隷制度を再導入したんだぜ。俺のどの一部もナポレオンじゃないさ(後略)」といったスピーチ内容を拒否するようなコメントなどが上がっている。しかし、同時に、現代の価値観で過去を否定するべきではないという言葉に共鳴する声も少なくない。(20 minutes、5/5)

 いずれにせよ、歴史家フレデリック・レジャン氏が指摘するように、「この記念のおかげで、ほとんどのフランス人は、ナポレオンが奴隷制を復活させたことを知るだろう」(20 minutes紙、5/5)し、それこそが、「歴史をともに思い返す」記念式典にふさわしい効果であるように思う。その5日後の5月10日はフランスの「奴隷制度と廃止の国家記念日」であり、マクロン大統領は式典を主催した。

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Text by 冠ゆき