「つり目」で中国人揶揄 イタリアTVで人種ジョークが行われる背景
先日、イタリアの民放風刺番組『ストリッシャ・ラ・ノティツィア(Striscia la notizia)』の司会者の2人、元政治家のゲリー・スコッティ氏(64歳)とイタリア・ドイツ・スイスで司会業をしてきたミッシェル・フンツィンカー氏(44歳)が目を吊り上げる仕草をし、Rai(巻き舌のラ)をLai(前歯の付け根に当てるラ)と発音して東洋人がRの発音が苦手なことを強調した。イタリア放送協会RAIの北京支局を紹介する際の言動で、中国人のことを茶化したのは明らかだった。
これがSNS上で「人種差別だ」と大きな批判を受けた。後日、女性司会者のフンツィンカー氏は、自身のインスタグラムで自身の言動に関して謝罪の言葉を述べた。フンツィンカー氏はスイスで生まれ育ち、イタリアへ引っ越して10代からモデル業を始め、司会や女優へと活躍の場を広げた。スコッティ氏のほうは現在まで、本件に対してノーコメントだという。
コロナ禍でとりわけアジア系への人種差別が問題となっているなかでの2人のこの言動は、ヨーロッパ中、そして北米でも報道され、日本にも伝わった。
今回なぜこのようなことが起きたのか、その背景を探ってみよう。
◆ふざけるのは当たり前の番組
本騒動が起きた大きな背景には、『ストリッシャ・ラ・ノティツィア』がニュースを「面白おかしく届ける」方針を取っていることがある。1988年以来30年以上続く長寿番組で、イタリア在住者によると、ニュース自体は真面目だが司会者たちもレポーターもギャグを連発したり変な格好をしたりして、まるで娯楽番組で、国民的な人気を集めているという。
この番組を放送しているのは民放のカナーレ5だ。カナーレ5は、メディア王であり伊元首相のシルヴィオ・ベルルスコーニ氏が所有している。ベルルスコーニ氏は差別発言が多いことでも知られる。