春休み後に感染者増加 アメリカが第4波の危機に陥った理由

ニューヨーク市のユニオンスクエアの買い物客(3月26日)|Mary Altaffer / AP Photo

 学校が春休みに入る前のマスク着用令撤回はタイミングが悪かったとしか言いようがない。国民の約2割しかワクチン接種を済ませていないのにもかかわらず、感染拡大が鈍り、マスクやソーシャルディスタンスなどの規制が緩んだことから、開放的な気分になってしまったアメリカ人の多くが一斉に旅行に出かけたのである。アメリカの「スプリング・ブレーク(春休み)」と言えば、大学生が集団で旅行に出かけて大騒ぎすることで悪名が高い。新型コロナ以前は観光客が押し寄せても健康的被害が出るわけではなかったが、昨年以降は事情が違う。

 東部・南部の学生たちはフロリダ州に集まる傾向が強いが、今年はとくに開放感を求めて多くの人々が同州マイアミに向かったようだ。まだコロナ禍であることに変わりはないのに人が集まりすぎたせいで、ABCニュース(電子版)によると、同市市長は3月20日に緊急事態宣言を発令し、夜8時以降を外出禁止とした。

 筆者の住むハワイ州にも、3月中旬から下旬までの春休み期間、堰を切ったようにアメリカ本土から多くの観光客が押し寄せ、ワイキキは多くの人で賑わっていた。しかしハワイ州への訪問者が10日間の自主隔離を避けるためには、出発72時間以内に取得した新型コロナ陰性テスト結果が必要となっていることから、幸いにも感染被害は最小限に食い止められている。それでも、3月中旬までは州全体で新規感染者が50人以下の日々が続いていたにもかかわらず、春休み後はその数がじりじりと上がり、ハワイ州保健衛生局の統計によると、3月30日には州全体の新規感染者が109人、31日には129人と、2月下旬の数と比較して3倍近くに跳ね上がった。春休み旅行者が去ったいまは徐々に感染者が減少しており、同局によると4月7日の新規感染者は州全体で76人だった。
 
◆祝祭日や休暇ごとに感染急増、でも学ばず
 一方、ワクチン接種が進んでいるためか、3月中旬から下旬まで一時的に感染者が増加したアメリカ全体でも、春休み後はまた徐々に感染拡大のスピードが鈍ってきている。ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、4月7日の新規感染者は全米で6万1775人と、今年1月の最多記録と比較すると4分の1以下となっており、下降傾向にあることは間違いない。

 しかし、いまの時点では人口の8割がまだワクチン接種を受けていないということは、国民の大半はまだ危険にさらされているということだ。にもかかわらず、昨年から7月の独立記念日、6~8月の夏休み、11月の感謝祭、12月のクリスマスと冬休み、そして今回の春休みと、祝祭日や長期休暇があるたびにアメリカでは感染者が急増するパターンが相変わらず続いている。失敗を何度か繰り返せば学びそうなものだが、多くのアメリカ人(とくに共和党支持者)は自分たちや周囲の人々の健康や命を危険にさらしてまで、新型コロナウイルスに対する懐疑的かつ反抗的な姿勢を保つことを「勲章」とでも考えているのだろうか。

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Text by 川島 実佳