航空界最大のミステリー、MH370失踪 遺族が立てた仮説
◆ジャーナリストによる仮説
3月4日に『VOL MH370 La disparition(MH370便 行方不明)』を上梓したフロランス・ド・シャンジー氏は、ル・モンド紙やラジオ・フランスなどの特派員を香港で務めるジャーナリストだ。2014年の事件発生時にはクアラルンプールに駆けつけ現地で取材をした。彼女もまた、マレーシア当局の一貫しない説や矛盾する言葉に疑問を覚えたひとりだ(ル・モンド紙、3/4)。
7年かけた取材と調査をもとに、公式発表の分析を行ったド・シャンジー氏は、そこに真実がないことを確信するにいたる。彼女による大胆な仮説は次の通りだ。MH370に載っていた何かが理由で、軍用機は、同機を別の場所に誘導しようと試みた。しかし、パイロットがこれを拒絶するなどして失敗し、ミサイルで撃沈するに至った(Europe1、3/7)。
ド・シャンジー氏の調べによれば、MH370には、ペナン島から護衛つきトラックで運ばれた2.5トンの大きな貨物が載っていた。中身はトランシーバーとバッテリー充電器だとされたが、不思議なことにスキャンされることなく積載されている。また、ベトナム航空機のパイロットがMH370の遭難信号を受信したと証言したこともミサイルを受けたとする彼女の説を裏付けるものだ。同氏は同パイロットの証言を録画で所有しているが、この証言とそれに関するツイートは、なぜかその後すべて消されたという(同)。
またド・シャンジー氏は、軍用機がMH370を別の場所に誘導する際には、早期警戒管制機(AWACS)が用いられたと考える。つまり、飛行するMH370をAWACSの2機がはさみ、レーダーに映らぬようスクランブルをかけたのだ。その証左の一つとして、同氏は「MH370の信号が、ホーチミンとクアラルンプールのレーダー画面から徐々に消えていった」事実を挙げる。なぜなら、もし、言われているように(MH370が)自らトランスポンダ(自動信号送受信機)を切ったのなら、MH370はレーダー画面から一気に消えたはずだからだ(同)。
ワトルロー氏とド・シャンジー氏、どちらの仮説も、MH370はUターンなどしておらず、アメリカ軍の関与があったとする内容で、同じ方向を指している。あくまで仮説の範疇を出るものではないが、いくつかの不可解な点を説明できることは注目に値するであろう。
ワトルロー氏が取材に応じ続けるのは、事件を風化させないことで、事実を知る誰かが、いつか話してくれるのではないかと期待するからだという。筆者は、事件の数ヶ月前まで、ワトルロー家とは隣人づきあいをしていた。彼らが5人家族だったころの笑顔は忘れられないし、忘れたくない。乗っていた239人とその遺族らのためにも、いつか事実が明らかになることを心から望む。
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