「陰性証明ないと入国拒否」は「遅すぎ」? 日本の水際対策の変遷
◆変異株出現で12月末から再び引き締め
一度は下火になったかに見えたパンデミックだが、世界的に第2波、日本には第3波が押し寄せるなか、イギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異株が出現。これらの変異株は従来のものより感染力が非常に強いことから、日本は新たな措置の実施に踏み切る。まず12月24日以降のイギリスからの新規の入国を拒否した。ちなみに「新規の入国」というのは、日本人と日本在留許可を持つ外国人以外の入国を指す。日本人や日本在住外国人の入国は「再入国」にあたるからだ。そうして27日以降の英国からの再入国者には出国前72時間以内の検査証明を求め、提出できない帰国者には、検疫所長の指定する場所で14日間待機することを要請すると決めた。続いて2日遅れで、南アフリカ共和国からの入国についても同じ措置を適用する。26日からの新規入国者禁止、29日から帰国者への検査証明要請だ。
さらに12月28日からはすべての国・地域からの新規入国を拒否。加えて、30日以降の変異株流行国・地域からの入国者には、72時間以内の検査証明を求めるとともに、入国時の検査を実施した。年明け1月9日からは、72時間以内の陰性証明と入国時の検査を、すべての国・地域からの入国者に課すものとした。
なお、これだけ矢継ぎ早に厳しい措置を取りながらも、中韓を含む11ヶ国・地域からビジネス関係者などを受け入れている入国緩和策はなかなか変更しようとしなかったが、二転三転の末、1月13日、ようやく一時停止にすることを菅首相が発表した(朝日新聞、1/13)。
◆3月5日発表の「入国拒否」とは?
ここまでみると冒頭の「入国拒否」報道の何が新しいのか、という疑問がよぎるだろう。
実は、出発「72時間以内の陰性証明書が要求される」とあっても、3月までは「検査証明を提出できないものに対しては、検疫所長の指定する場所での待機を求め(中略)入国後3日目に改めて検査を行う」という但し書きつきだったのだ。そのため、陰性証明書を持たずとも実際には日本行き飛行機への搭乗が可能だった。
この現状を覆したのが3月5日発表の「水際対策強化に係る新たな措置(9)」だった。すなわち、検査証明を持たないものは上陸できないものとし、「不所持者の航空機への搭乗を拒否するよう、航空会社に要請」と定めたのだ。そこから「入国拒否」報道へとつながり、大きく取り上げられることになったわけだが、上にみてきたように、政府も決してそれまでただ手をこまねいていたわけではない。