ワクチン投与が順調 アメリカが「集団免疫」を得る日は
◆全人口の1割以上がワクチン1回接種
しかし、全米で順調にワクチン投与が進行しているとはいえ、各州政府により進度に差が出ているのが実情だ。ニューヨーク・タイムズのデータによると、州以外の領土を含むアメリカ国内で、現在最も迅速に進行しているのは米領サモアで、人口の22.2%が1回目、15.8%が2回目のワクチン接種を受けている。それに続き、アラスカ州が21%と11.5%、米領グアムが19.2%と10%、そして米領北マリアナ諸島で17.8%と12.1%と続いている。これらの州・領土では他州に比べて人口が極端に少なく、投与がしやすいという利点はあるだろう。しかし、いまの時点ですでに全州で人口の10~15%程度が少なくとも1回の接種を受けている状態で、今後も順調にこのペースが続けば、3月中にはこの割合が倍以上になる可能性も十分ある。
ちなみに、筆者の住むハワイ州では、新規感染者数は現在1日平均50人前後で、前出のデータによると、これまでに全人口の15.8%が1回目、7.6%が2回目の接種を受けている。高齢者への接種が順調に進んでいることから、これまで75歳以上だった優先対象は70歳に下げられたほか、エッセンシャルワーカーや教師も対象となっている。
◆年末までに「正常な状態に近づく」可能性も
前出のニューヨーク・タイムズの記事によると、「集団免疫」が効力を得るためには、人口の70~90%が新型コロナウイルスへの抵抗力を持たなければならないという。アメリカにはワクチン接種を拒否する人々も一定数存在するが、このペースで投与が進めば、ワクチンを希望する人口の多くが夏頃までには接種を受けることも十分可能となりそうだ。
ABCニュースによると、ミシガン州にあるファイザー社のワクチン製造工場を訪問したバイデン大統領は19日、新型コロナウイルスによるパンデミックがいつ終息するのかと尋ねられ、「この危機がいつ終わるのか、日付を特定することはできない。しかし、その日がなるべく早く来るようにできる限りすべての努力をしている」としながらも、「今年の年末までには正常な状態に近づいていると思う」と答えた。
しかし、ワクチン投与が進み、大多数の人々が接種を受けた後も、しばらくはマスク着用ルールが続きそうだ。国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長はCNNのインタビューで、「アメリカは今年の年末までには著しく正常な状態に近づいているかもしれないが、2022年もマスク着用の必要がある可能性もある」と発言。ワクチン投与は順調に進んでいるとはいえ、普段の生活が2020年初頭以前に戻るまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
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