感染力最大7割増のコロナ変異株 急遽ロックダウンでイギリス混乱

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◆感染力の高さを懸念 ワクチンの効果は?
 BBCによれば、実は変異株が見つかったのは9月で、ロンドンで11月に変異株による感染が増加し、12月半ばには全体の感染の3分の2までになっていた。変異株はこれまでより70%高い感染力があり、基本再生産数を0.4増加させると専門家は見ている。変異株の感染はロンドンに集中しているが、北アイルランドを除く全土で見つかっている。すでにデンマーク、オーストリア、オランダでも確認されており、類似の変異をした型が南アフリカでも出現している。

 今回の変異株は並外れて大きく変異しており、免疫系が弱っている患者の体内で変異が出現し、患者の体がウイルス変異の温床となった可能性が指摘されている。変異株による感染でより重症化するという証拠はないが、感染が急増することで入院を必要とする人の数が増え、医療のひっ迫が予想される(BBC)。

 ワクチンが効かないのではないかという懸念も出ているが、専門家は当分の間は心配ないと見ている。しかし、ウイルスの変異が続けば、ワクチンエスケープ(ウイルスが変化し、ワクチンの最大効果を回避し人に感染させ続けること)が起こる可能性があるため、インフルエンザワクチンと同様に、定期的な更新が必要になる(同上)。

◆度重なるUターン 対応のまずさに批判
 12月16日には、クリスマス中止は非人間的だと述べていたにもかかわらず、突然の厳しいロックダウン規制を敷いたジョンソン首相には、厳しい批判も出ている。過去にも新型コロナ対応に関する発言を二転三転させており、CNNは、首相は迷走しがちでUターンが多すぎるとしている。

 オブザーバー紙の社説は、危機対応としてのロックダウンは仕方がないが、多くの専門家が以前から感染状況の悪化を認識し警戒を怠るべきではないとしてきたのにもかかわらず、ジョンソン首相がクリスマスの規制緩和を国民に約束したことを問題視。緩和は保証できないと誠実に伝えるべきだったのに、偽の安心と期待を与えてしまった。変異株の出現やパンデミックをすべて政府の責任にすることはできないが、国民の落胆は正当化されるとし、今回もいつものコミュニケーションエラーだったと厳しい見方だ。

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Text by 山川 真智子