Qアノン:SNSが表舞台に押し上げた陰謀論 政界にも深く浸透

聴衆の前で演説するQアノン信者(11月5日)|Dario Lopez-MIlls / AP Photo

 この流れは、2016年にアメリカで広まった陰謀論ピザゲートを思い起こさせる。ピザゲートとは、ワシントンD.C.のピザレストランの(実際は存在しない)地下室に、ヒラリー・クリントンらが関わる児童買春組織のネットワークが隠されているという陰謀論で、Qアノンの前身ともいえる。2016年12月4日には、ピザゲートを信じ込んだ男が、銃を持って疑惑の汚名を着せられたピザレストランに押し込む事件にまで発展した。

◆FBI:陰謀論は国内テロの脅威
 陰謀論を動機とする暴力事件の多発を受け、FBIも陰謀説を国内テロの脅威とみなすに至る。2019年5月30日付のFBI文書は、とくにQアノンとピザゲートに言及し、これらの陰謀説はグループ、個人の過激派双方を犯罪や暴力行為に駆り立てる可能性があると記述しているのだ。また同時に「FBIは、陰謀論に基づく過激派が2020年の大統領選挙期間中に増加する可能性があるとも考えている」と予見している(ヤフーニュース、2019/8/2)。

 実際、Qアノンの台頭は、脅威を感じるに値する速度で進んだ。NBCニュース(8/11)は、8月の時点でフェイスブックには「Qアノンを支持する数千のグループと数百万のメンバーとフォロワー」が数えられると報道している。またABCニュース(8/21)によれば、2020年3月から8月までで、Qアノンに関するコンテンツは、「ツイッターで71%増加し、フェイスブックのページとグループは651%の増大を見せた」という。

Text by 冠ゆき