欧州の大流行、変異株が夏季休暇で拡散か 「対岸の火事」の危険

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◆ヨーロッパ第二波の要因は?
 ヨーロッパの第二波の要因としては、第一に夏のバカンスの移動が大きいと考えられている。フュチューラ・サンテ(10/29)は、「7、8月、とくに若者がウイルスに感染したが、(中略)多くの場合無症状だった。だが、9月になって、年配者への感染も始まった。(9月の)学校の再開も感染拡大に有利に働いた」と指摘する。次に天候の影響が考えられる。実際9月末からは気温が下がり、悪天候が続いたため「人々はより多くの時間を屋内で過ごし、換気も減った」(同)のだ。さらに、接触追跡も成功したとは言えない。たとえば「PCRテストの数を一日平均25万」と大幅に増加したフランスでは、「テスト結果に10~15日要するようになった」(同)せいで接触者追跡がほぼ不可能になった。その解決策として開発されていた接触確認アプリStopCovidの普及にも失敗したかたちだ。

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◆夏以降ヨーロッパに蔓延しつつある変異株20A.EU1
 そんななか、スイスのバーゼル大学の研究者らは10月25日、現在欧州を席捲している新型コロナウイルスは、変異した「20A.EU1」だとプレプリントサーバー「medRxiv」に発表した。この研究によれば、20A.EU1は、6月にスペインで突然変異により現れたと見られており、「7月以降は新たな症例の4割以上を占めている」という。その後広く欧州各国に侵入し、7月15日以前はほぼ存在しなかったのに、「9月のスイス、アイルランド、イギリスでは4~7割に増加」。現在、フランス、ノルウェー、ドイツ、オランダ、ベルギーなど少なくとも12ヶ国でその存在が確認されているという。

 わずかな期間に20A.EU1が欧州で拡大したことは明らかだが、「(従来の新型コロナ)よりも速く広がるという確証はない」と研究者らは慎重だ。また、「この変異が疾患の重症度に影響するかどうかもデータがない」ため不明だとしている。その一方で主要著者であるエマ・ホドクロフト氏は、「コロナウイルスのゲノム配列の研究を始めて以来、これほど強力なダイナミクスを持つ変異体を観察したことはない」と20A.EU1の特徴を述べている(フュチューラ・サンテ、11/1)。感染力や重症化との関係はいまのところ不明とはいえ、注意したい変異体といえよう。

Text by 冠ゆき