子宮頸がんワクチン、海外の状況は? 男子への接種を進める国も
◆ワクチン普及10年で世界のHPV感染9割減少
HPVの主要な感染経路は性的接触なので、HPVワクチンは「初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的」である(日本産科婦人科学会)。そのため、どの国も11~14歳ごろの接種を推奨している。日本では中学1年生となる年度が接種開始時期とされている。HPVワクチンは、現在、世界約130ヶ国で承認され、「80か国以上において(中略)国の公費助成によるプログラムが実施」(同)されている。オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスが最も早く2006年にHPVワクチンを導入した。ワクチン導入の効果は大きく、2016年までの「10年間で、世界中で7200万人が接種し、HPV感染は90%も減少」した(『プルクワ・ドクター』)。
同じヨーロッパ内でも国によってHPVワクチン接種率は異なる。トップサンテ誌(2019/1/23)によると、HPVワクチンを予防接種プログラムに取り組んでいるスウェーデンやポルトガル、イギリス、スペインなどでは接種率は53-82%と高い。一方、フランスの接種率は近隣国と比べて低く、15歳女子で24.4%しかない。これは、後述の副作用の疑いの影響もあるかもしれないが、国がHPVワクチンを「推奨」の枠にとどめていることにも大いに関係するとみられている。
なお、世界でもっともHPVワクチンの普及が進んでいるのはオーストラリアで、「接種率は15歳の女子で80%近く、15歳の男子では75%」(同)に上り、近々、子宮頸がん根絶に成功する最初の国になると見込まれている(ランセット、2018/10/2)。
◆増える男子への接種
オーストラリアでは男子のHPVワクチン接種率も高いが、男子の接種のメリットは二つある。一つは男性から女性へのHPV感染を減らすこと。もう一つは、男性自身の感染を防ぐことだ。というのも、男性もHPV感染により、肛門がんや陰茎がん、舌がん、咽頭がんなどの病を得る可能性があるからだ。とくに近年、先進国では咽頭がんの広がりが観察されており、「HPVを原因とするこのがんの25%近くは男性」が罹患者だという(トップ・サンテ、2019/10/31)。
このような背景から、男子のHPVワクチン接種に踏み切る国も増えつつある。現在すでに導入しているのは、前述のオーストラリアのほか「アルゼンチン、イギリス、アメリカ、カナダ、スイス、イタリア、オーストリア、ノルウェーなど約20ヶ国」(トップ・サンテ、2019/1/23)で、フランスも「2021年1月から11~14歳の男子への接種を推奨し始める」予定である(サンテ誌)。