新型コロナ:若者は加害者なのか、被害者なのか
◆若者同士で感染し合えば一石二鳥?!
若い世代に責任ある行動をと呼びかける声のほか、まったく別の解決策の提案も聞かれた。パリのピティエ・サルペトリエール病院の感染症科責任者であるコーム教授は、「若者たちにマスクを強要したり、複数で集まるなとは言えない」のだから、「若者同士で、感染し合うままに任せるのがいいのではないか」と発言している(ラ・デペシェ紙、8/2)。そうすれば、「彼らは集団免疫に参加し、(9月の)新学年度には、大学や学校での集団免疫がより高くなる」(同)というのがその考えだ。もちろん、両親や祖父母の世代と接触しないことが条件、とは言っているが、この発言は物議を呼んだ。実際、ラ・デペシェ紙も、Covid-19に関しての免疫効果はまだ定かではないこと、若者が若者同士だけで感染し合う保証はないこと、若者もまた重症に陥る可能性があることの3点を挙げ、コーム教授の意見は現実的ではないことを示している。
◆感染者数増加は責任感の表れ?
そうかと思えば、若者の感染者数の増加は、逆に責任感の表れだと評価する声もある。例えば、ジュネーブ大学医学部の研究所長フラオー教授は「自分自身の健康には問題がないのに検査を受けに行く若者の行為は利他主義で(中略)感染の連鎖を断ち切るのに役立つ」ものであるから、むしろ「国民は若者に恩義があると言える」と考える(20minutes、8/18)。疫病調査史の専門家であるビュトン教授も同様に20代の肩を持つ。「若者に陽性者が増えたということは、感染テストに行く人数も増えたということだ。彼らは我々が思うよりも集団思考ができるのだ」(同)。
とはいえ、同教授のこの発想はフランスならではのものだ。というのも、フランスでは現在PCR検査に医者の処方は不要で、希望者は誰でも受けることができ、費用も全額保険の負担となっているからだ。若い世代が積極的に感染テストを受けに行っているという解釈は、簡単にPCR検査を受けられない日本のような国では成り立たない。