国産布マスクより中国製の使い捨て……「裏切られた」フランスの製造業者

Kamil Zihnioglu / AP Photo

◆ますます値下がりが予想される輸入マスク
 ところで、フランスでは7月末から屋内屋外ともにマスク着用を義務とする場所が増える一方である。また、9月に始まる新学年度を前にした8月20日、ブランケ教育相は中学生と高校生のマスク着用を義務とする旨を発表した。このように、フランスでのマスクの需要は増加の一途をたどっている。しかし、それにもかかわらず、マスク在庫を抱える企業の見通しは明るくない。9月以降、使い捨て輸入マスクの値段のさらなる下落が予想されているからだ。

 キャピタル誌(8/10)は、中国からの輸入量の増加と、航空便から船便へと輸送手段が変わったことがその理由であると説明している。5月2日の政令において、サージカルマスクの価格は1枚0.95ユーロ(約119円)に制限された。50枚入り1箱だと47.5ユーロ(約6000円)が上限となる計算だ。同記事によれば、この価格の3分の1~半分は、航空運賃が占めていた。

 その後、徐々にマスクの価格は下がり、8月に入ってからの平均価格は50枚入り1箱が約25ユーロ(約3100円)にまで落ちた。同誌は、9月中にはこれが半額まで落ちる可能性があると予想している。実際、8月17日の同誌記事によれば、オンラインショップなどでは、一箱15~20ユーロ(約1900~2500円)でのセールも珍しくなくなってきている。

 しかし、たとえ使い捨てマスクの値段がいまの半額になったとしても、ウォッシャブルな布マスクのほうが、1日あたりの単価は低く済むはずだ。それでも使い捨てマスクを選ぶのはなぜだろうか。一度「使い捨て」の手軽さを味わうと、なかなか手放せないということなのだろうか。

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Text by 冠ゆき