国産布マスクより中国製の使い捨て……「裏切られた」フランスの製造業者

Kamil Zihnioglu / AP Photo

◆国を挙げての美談の苦い展開
 しかし、美談は美談で終わりはしなかった。マスク不足が解消されるにつれ、布マスクの注文は激減したからだ。上述のティサージュ・ドゥ・シャルリユー社も、6月頭にはすでに100万枚の売れ残りマスクを抱える状態となった。

 フランス北部の繊維会社も同様だ。クッション製造が本来の業務であるトゥフ・コンフェクシオン社は、「国の要望に応えるため、同業者と共同で、1万ユーロするポリアミド不織布をワンロール購入した。しかし2000枚ずつ製造したところで、注文が途絶えた」(フランス3、5/20)。

また、中小企業であるアヴィオ社は、50万ユーロ投資して洗える布マスク製造を始めたが「製造開始以来の売上高はわずか2万ユーロ」にすぎないという(フランス3、8/17)。

 ラ・クロワ紙は、布マスク製造に踏み切ったテキスタイル関係の企業は6月頭の時点で合計5千万枚ものマスクの在庫を抱えているという、繊維産業連合デュビエフ会長の言葉を紹介している。

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Text by 冠ゆき