国産布マスクより中国製の使い捨て……「裏切られた」フランスの製造業者
新型コロナ感染拡大当初、マスク不足が深刻だったフランスでは、政府の呼びかけに複数の繊維関係企業が応え、布製マスクの製造に乗り出した。ところが、最初の危機の山を越えたいま、その多くは、売れぬマスク在庫を抱え途方に暮れている。
◆連帯意識から応じた呼びかけ
瞬く間にフランス国土に感染が拡がりつつあった3月31日、マクロン仏大統領は、絶望的に不足するマスク事情をかんがみ、「フランス国内でより多く(マスクを)製造しなくてはならない」と発言した。ラ・クロワ紙(6/8)によれば、この呼びかけに応じ布製マスク生産に踏み切ったフランス企業は450社近くを数えた。わずかでも売り上げを伸ばし自社危機を乗り越えようという意図ももちろんあったであろうが、苦難のときこそなんらかの役に立ちたいという連帯意識も大きなモチベーションだった。
たとえば、最も早い時期の3月半ばにマスク生産に乗り出したティサージュ・ドゥ・シャルリユー社は、地元のグルノーブル病院の深刻なマスク不足を憂えて立ち上がった。しかも、無休の24時間ノンストップ生産という、フランスでは非常に例外的な体制を敷いたのだ。従業員らの献身的な協力なしではありえないことだった(AFP)。ル・モンド紙(6/8)によれば、同社はまたこの事業のために100万ユーロの投資もいとわなかったのである。