レバノン大爆発、モーリシャス座礁、回避できたかもしれない船舶登録規制

2020 Maxar Technologies via AP

◆モーリシャス座礁船の重油汚染
 インド洋の島国モーリシャスでは、現地時間7月25日夜に日本の貨物船「わかしお」が沖合でサンゴ礁に乗り上げ座礁した。その2週間後の8月6日の朝には、亀裂が入った燃料タンクから重油1000トン余りが流出。これにより絶滅危惧種が多く生息し、国際的に重要な湿地を保全する二つのラムサール条約指定地域を含む、希少で豊かな海洋生態系に被害をもたらしている。「わかしお」は日本の海運会社である長鋪汽船の関連会社OKIYO MARITIME社が所有しており、商船三井がチャーターし、4000トンの重油を運ぶため運航していた。現在も、現地の政府や人々により重油の回収および除去作業は続けられている。また、モーリシャス警察当局による船長を含む船員への取り調べも進められている。座礁当日に誕生日パーティーが開かれていたという証言や、Wi-Fiに接続するために海岸近くを航行したという説も浮上している。

◆二つの事故の共有点
 この二つの事故はどちらも船に関することである。船主の所在国とは異なる国に便宜的に船籍を置く船を便宜置籍船と呼ぶ。船を所有するためだけに実態のない名前だけの会社を設立し、名目上の船主とすることが多く、税金を低く抑えるためや、乗員の国籍要件などに関する規制を緩やかにする誘致政策により、煩わしい責任から逃れることができる規制当局を見つけようとする企業が多い。国際船舶登録の管轄区域トップ10は、パナマ、リベリア、マルタ、バハマ、アンティグア、マーシャル諸島、キプロス、シンガポール、香港、セントビンセントで、これらの国が最終的な船舶の検査、安全性、耐航性について責任を負う。この二つの事故からもわかるように、これらの国の規制当局が船舶、港、乗組員、および船舶が通過する場所の安全を確保していたかどうかは明白ではない。

 ベイルートの場合、船舶登録基準がより厳しくなれば、船舶と貨物の責任をもつ所有者を特定しやすくなり、有害な貨物が安全でない方法で運ばれることをそもそも防ぐことができた。モーリシャスの場合、船の所有者は日本企業であるにもかかわらず、船がパナマで登録されているため、日本政府の対応が積極的ではないという指摘もある。

 船舶のリスクを特定することは輸送事故を避けることにもなる。どのような船舶に領海通航を許可するとリスクが生まれるのか、たとえばそれが船長の危険な行動なのか、船の所有者のメンテナンス不足なのか。これらの要素を組み合わせ全体のリスクが明確になり、より安全できれいな海を維持することにつながる。いくつかの企業はこれらを検討しており、たとえばイスラエルのスタートアップWindwardは海事とデータサイエンスを融合させた衛星分析を行っている。

 先日、西アフリカのセネガル当局はベイルートで放置されていたより多い硝酸アンモニウム約3000トンが首都ダカールの港で発見され撤去に動いていることを発表した。さらにルーマニア当局も、黒海に面するアジジャの港で約5000トンの硝酸アンモニウムが違法に保管されていたと発表。今後の人びとの生活と地球の自然を守るため、船舶登録を考え直す取り組みは、大規模の災害を防ぐことができる具体的な行動の一つになる。

Text by sayaka ishida