SNSに広がる白黒セルフィー#ChallengeAcceptedと「スラクティビズム」の限界

Tara Abrahams via AP

◆広がる暴力被害と「スラクティビズム」
 各地で外出制限や自宅待機のコロナ対策が導入されるなか、トルコだけでなく、とくに女性や子供に対する暴力被害や、フェミサイドの事件が増加している。ドイツ発の国際メディアDeutsche Welle (DW)の記事によると、ロックダウンの影響で、中国、スペイン、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアなどで、DV件数が増加したとの報告だ。ニューズウィークの記事によると、南アフリカでもパンデミックの影響で、女性に対する暴力やフェミサイドが深刻化しているという。

 今回の、白黒セルフィーのムーヴメントで、多少はフェミサイドに対する認識が高まっているかもしれない。一方で、8月上旬Instagram上で、650万回以上使われている#challengeacceptedや、100万回以上使われている#womensupportwomenというハッシュタグとともに投稿されている、人気白黒セルフィーの多くは、「少し美化された、わたし」を宣伝する以上のものとは思えないものが多い。

 SNSを通じたこのような意思表明は、「スラクティビズム(slacktivism)」と呼ばれる。怠け者を意味するslackerと、アクティビズム(activism)を組み合わせた単語だ。ネガティブに聞こえる単語ではあるが、オンラインで気軽に行える嘆願書への署名といった行動を含むUNAIDSによる定義も存在するので、必ずしも無意味とはいえない。

 コロナの影響を受けた外出制限で、リアルな世界での積極的な活動が難しいなか、オンラインツールやSNSを使用した、スラクティビズムも必要だ。ジョージ・フロイド氏の殺害を受けて、再活性化した「Black Lives Matter」や#metooを通じた女性たちの訴えは、スラクティビズムあってこそ為し得た規模のムーブメントだ。

 しかし、今回のようにムーブメントとしての意義が薄れ、署名や寄付といった明確なアクションもないスラクティビズムでは、残念ながら、虐げられた人々を救うことはできない。白黒セルフィーのムーブメントは、SNSアクティビズムの可能性と限界が浮き彫りにする結果となった。

Text by MAKI NAKATA