SNSに広がる白黒セルフィー#ChallengeAcceptedと「スラクティビズム」の限界

Tara Abrahams via AP

 インスタグラムやフェイスブックで広がる、女性の白黒セルフィー投稿。最近、目にしたり参加したりした人も多いのではないだろうか。#challengeaccepted(直訳:挑戦を受けて立つ)というハッシュタグとともに、投稿される写真は、白黒写真であるせいか、アーティスティックな美しさが漂う写真も少なくない。しかし、「挑戦」の意図やムーヴメントとしてのメッセージ性がわかりづらい。この投稿トレンドの背景とは。

◆なぜ女性の白黒写真なのか
 説明分析型メディア、米ヴォックスの記事によると、#challengeacceptedのハッシュタグの白黒セルフィの投稿トレンドは、2016年に遡る。当時、がんに対する啓蒙活動として始まったが、あまりに稚拙な活動として批判されたとされる。2020年に改めて始動した白黒セルフィのムーヴメントは、ブラジル人ジャーナリストのAna Paula Padrãoが7 月18日に#womensupportingwomen(女性による女性のサポート)というハッシュタグとともに、白黒写真を投稿したことが直接の起源であるという説が有力だ。

 一方で、トルコでは女性アクティビストによる、フェミサイド(女性に対する殺人)と女性に対する暴力の件数の多さに対する抗議と、課題の啓蒙活動として、女性の白黒写真の投稿が広がったようだ。トルコにおけるフェミサイドの被害者たちが、白黒のポートレイト写真とともにニュース報道で伝えられていることを受け、被害者の女性に自らを置き換えることで、連帯を表明するというのが白黒セルフィの狙いだったようだ。

 トルコにおけるフェミサイドは、決して急浮上したものではなく、2019年には少なくとも474人の女性が殺害された。しかし、先月に発生した27歳の大学生、ピナール・グルテキン(Pınar Gültekin)が、32歳の元交際相手に殺害されたという事件をきっかけに、デモや抗議活動が巻き起こった。アルジャジーラの報道によると、被害者の女性は失踪から数日後に遺体で発見された。樽の中で体を拘束された状態で、その樽が林の中で地中に埋められたうえ、コンクリートで隠蔽されていたということだ。逮捕された元交際相手は殺害を認めた。

 トルコは、女性に対する暴力やDVに対処する政策として、欧州評議会が策定したイスタンブール条約に2012年3月、どの国よりも早く批准した国だ。一方で、伝統的な家族のあり方を唱える保守派が、イスタンブール条約が離婚を促進するものだとして、条約からの脱退を訴える嘆願書を繰り返し提出してきており、条約は必ずしも女性たちを保護しきれていないようだ。今回、トルコの活動家らを中心にまきおこった、オンラインの抗議行動では、当初、#istanbulsözleşmesiyaşatırといったイスタンブール条約の遵守を主張する、トルコ語のハッシュタグも使われていた。

Text by MAKI NAKATA