“マスク嫌い”のフランス、ついに屋内での着用義務化
◆物議をかもしたニースのイベント
ちょうど同じころ7月12日、南仏ニース市が開催した無料コンサートが物議をかもす。会場である海辺が屋外巨大ディスコ状態と化し、人々がひしめき合う様子がネットに流れたためである。とはいえ、このイベントは、政府の取り決めに従い、参加者を5000人に制限したものであった(フランス・アンフォ7/12)。このことから、すっかり気を緩めた国民がいる一方で、危機感を募らせる国民も少なくないことがわかる。
上述のように、もともとニースのエストロジ市長は5月頭にマスク着用義務を決めたほどの慎重派である。同イベントへの批判を受け、同市長は、政府に「たとえ屋外でも大きなイベント時にはマスク着用を義務とするよう政令を見直すように」と要請した(同上)。同時に、ニース市内での開催可能イベント規模を国の取り決めの半分である2500人までに改め、市内ではマスク着用を夏中義務とすると定めた(ル・モンド紙7/13)。
◆パリ祭に発表されたマスク着用義務化
これらの移り変わりと並行してフランス政府の姿勢にも変化が見られ、7月12日には任命から9日目となるカステックス新首相が「マスク着用義務については議論中」と発言。ヴェラン厚生相もこの動きを肯定した。マスク着用義務付けまでいよいよ秒読みとなったかに見えた7月13日には、コロナウイルスの被害者と医療専門家らが「すべての屋内でのマスク着用を政府が義務付けるよう国務院に要請」する動きも加わった(ル・モンド紙7/13)。
そしてマクロン大統領は7月14日、国民の祝日に際したインタビューで「8月1日から屋内でのマスク着用を義務付ける」意向を述べるに至る(20 minutes 7/14)。マスク着用推進派はただちにこれを歓迎したが、なぜ半月も先のことなのか理解できないという声も上がり、これに応えるかのように、アタル政府報道官は翌15日、政令の準備が整えば、8月1日を待たずに施行すると付言した(BFMテレビ7/15)。
かくしてフランスとマスクの相容れない関係にようやく終止符が打たれることになったわけだが、大衆への浸透がいかほどかは、蓋を開けてみるまではまだわからない。実質「国民皆マスク」状態を半年続けてきた日本でさえ、新型コロナの根が絶える様子はないのだ。上に「終止符」とは書いたが、実際は新たなスタート地点をマークしたに過ぎないことを肝に銘ずる必要があるだろう。それはまた、全世界に共通する覚悟でもある。