欧米に不可解に映る日本の「入国拒否」
◆相互主義の不在
新型コロナの影響で、大抵の国は多かれ少なかれ入国制限を行っている。しかし、少なくとも、日本のそれと欧米のそれには大きな違いがある。欧米では、滞在許可証を持つ外国人は出入国に関し、国民と同じ扱いを受けるが、日本ではこの限りではないという点だ。
言い換えると、ヨーロッパの滞在許可証を持つ日本人は、たとえ欧州外にいても7月1日を待たず欧州に再入国することができたが、日本在住のヨーロッパ人は、一度日本を出国すると、たとえ滞在許可証を持っていても、基本的に日本に再入国することができない状態が続いているのだ。
フィガロ紙(5/21)は、「日本はバリケードを築き、批判を集める」と題した記事のなかで、東京で働く管理職ヨーロッパ人の話を紹介している。彼の妻子は、3月半ば葬儀参列のため欧州に一時帰国したのち、日本への再入国を阻まれた。3週間に及ぶ交渉と2週間の隔離期間を経て最終的には妻子と再会できたが、同氏は「私は幸運だった。普通なら(入国)できなかった」と振り返る。
ローラン・ピック在日フランス大使は6月16日、在日フランス人に宛てたメッセージのなかで、当初より「欧州連合が(中略)日本の当局から柔軟性を獲得し、相互主義(互恵主義)の原則の適用を要求するために行動した」と記している。その甲斐あり、「日本は個々のケースを検討」することに同意(『サイエンス・スコープ』)。日本の法務省は6月12日公開した「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否の措置に関し、個別の事情に応じて特段の事情があるものとして再入国を許可することのある具体的な事例」という文書のなかで、「個別の事情に応じて特段の事情がある場合は再入国を許可することがある」と記述した。(ただし、同文書に書かれている内線番号は、たまたまかもしれないが、筆者がかけた日は、朝から夕方までほぼ30分おきにかけ直したにもかかわらず、常に話し中で通じることがなかった。)
いつ再会できるかわからず離れ離れになった家族。日本の職場に戻ることができず、収入難に陥る人々。実の親が母国で亡くなっても、日本に再入国できる保証がないため葬儀への参列をあきらめる人々。上述のル・モンド紙の記事は、「(日本)列島に住む290万人の外国人が、移動予定をブロックされている」と指摘する。