「封鎖なし」は本当に失敗だったのか? スウェーデン現地から見たコロナ対策
新型コロナ渦においても近隣諸国のように厳しいロックダウンをせず、異端児的な存在となったスウェーデン。日本でも注目され、賛否が分かれた。6月時点でスウェーデンでの100万人当たりの死者数は459.3人で世界ワースト4位。果たして、その対策は失敗で、人々は死を恐れ、震えながら暮らしているのか。ピークがひとまず去ったいま、スウェーデンのコロナ禍の事情を、在住者である筆者が包括的に考察し、お伝えしたい。
◆スウェーデンの犯した失敗
イギリス国営メディアBBCによると、スウェーデンの公衆保健当局は、5月14日時点で当国の新型肺炎死者の48.9%が老人施設の入居者であったと述べた。
これは、老人施設のスタッフのほとんどが時給で働いているが、病欠の際の所得補償が後手に回ったために、少々の不調では休まなかったこと、また、専門の教育を受けていない人が多く、適切な衛生管理ができていなかったことなどの原因が考えられている。
上述の記事は、そのほかの死亡者もほとんどが70歳以上であると伝えており、社会が高齢者を守り切れなかったことが指摘された。
老人施設以外では、ストックホルムの低所得者層エリアで多発した。住民に、バスの運転手や介護士、飲食業など、感染リスクのある仕事の人が多いことに加え、狭い住居に多世帯で同居する、スウェーデンと慣習の違う海外生まれの人が少なくないとの要因が指摘され、取り残された弱者がいることもまた浮き彫りになった。
人口あたりの死亡者数は多い。しかしそれは、1千万をほんの少し上回る程度の人口の国で、特殊な事情を抱える場所でクラスターが発生したためであった。ロックダウンしなかったことと高い死亡率は関係が薄いと言え、ほとんどの人たちはウィルスの影に怯えることなく暮らしており、その点では間違いを犯したとは言い難いであろう。
また、スウェーデンは、感染拡大初期の段階で集中治療室の数を2倍に増やしていたため、4月半ばのピーク時でも20−30%の空きがある状態を維持し、医療崩壊も起こしていない。