「日本、コロナに勝利」海外報道も肯定的に「でも理由不明」

Eugene Hoshiko / AP Photo

◆いまだに謎……成功の原因特定できず
 もっともどのメディアも、「決定的要因、または要因の組み合わせは不明」(フィナンシャル・タイムズ紙)、「専門家にもわからない」(ブルームバーグ)、「明らかな理由が見つからない」(テレグラフ紙)と、日本成功の原因は謎だとしている。マスク着用、ハグやキスをしないお辞儀文化、靴を脱ぐ習慣、衛生意識の高さなど、日々の日本人の振る舞いがウイルス対策になったという見方が主流だ。また、国民皆保険制度、志村けんさんなどの有名人の死、肥満の少なさ、知事たちの活躍をあげるメディアもあった。

 ブルームバーグは、欧米が感染拡大前には他国の被害を対岸の火事と見ていたのとは対照的に、ダイヤモンド・プリンセス号の惨事を経験した日本は事態を他人事としてとらえなかったのが幸いした、という早稲田大学の田中幹人氏の意見を紹介している。ガーディアン紙は、渡航制限は遅れたものの、早くから危険を察知し、公共施設の閉鎖、イベントの中止、学校休校などを決めたのが良い結果を生んだと見ている。前出の渋谷氏は、ステイホームを守った国民の協力と緊急事態宣言の偶然のタイミングの良さのおかげだとし、自粛は本物のロックダウンほどの効果があったとサイエンス誌に述べている。

 これまで常に批判されたのが検査の少なさだったが、それを補う効果があったと評価されたのが、接触者追跡とクラスター対策だ。ブルームバーグは、最初の感染が確認された1月から保健所による迅速な接触者追跡が始まり、感染が広がり制御不能になる前に、クラスターを見つけては潰すことが行われたとしている。安倍首相のリーダーシップの欠如は批判されたが、それによって医師や医療専門家が表に出る結果となり、彼らの公衆衛生上の危機におけるベストプラクティスが大きく貢献したとも見ている。

 サイエンス誌も厚労省クラスター対策班の東北大学大学院教授の押谷仁氏にインタビューし、クラスター対策を説明している。クラスターは無症状、または症状の軽い人から始まる傾向がわかっており、押谷氏は検査をしてもクラスターの発生を抑えることは不可能だとする。そこで、密閉、密集、密接という三密の危険性周知となり、これが日本の戦略の最も重要な要素となってきたと解説している。3月からの帰国者流入による感染拡大で緊急事態宣言となったが、クラスター、3密を加えた接触者追跡が、日本の早期の対策だったと同誌は理解している。

◆最悪を回避 課題は次への備え
 海外メディアは、最悪の事態を免れたものの、まだまだ問題は残るとしている。ブルームバーグは、次の感染の波が来れば、高齢者の多い日本のリスクは高まると見ている。検査体制を充実させ、SARSやMERSの経験から学んだ近隣国を手本にするべきだと述べる。ガーディアン紙も、検査数が少ない日本では、感染の度合いが正しく把握されておらず、油断は禁物という専門家の意見を紹介している。

 渋谷氏は、感染者数が減っていることは認めるが、クラスター対策に注力することはいまだに疑問だとしており、大都市ではうまくいかず、病院や老人ホームの集団感染も止められなかったと指摘する。今回は大丈夫だったものの、医療は崩壊寸前だったと述べており、次もうまくいくかどうかはわからないことを示唆した(サイエンス誌)。

Text by 山川 真智子

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