ギリシャ、厳格・迅速対策でコロナ封じ込め 汚名返上の大成功
◆早めの対策が決め手 政府への信頼アップ
ギリシャの成功には、いくつかの理由があるとメディアは指摘する。まず一つ目は、病理学者で感染症専門家のソティリス・ティオドラス氏の存在だ。同氏はギリシャ政府の指導者にいち早くパンデミックの危険性を警告し、新型コロナ危機の担当者となった。日々の新型コロナ関係の会見を監督し、政府と国民の間の連絡役として貢献した。ギリシャの指導者たちも団結してティオドラス氏に協力し、他国で見られたような整合性に欠ける意思決定を最小限に抑えることができたという(EUオブザーバー)。
国内での感染者が出た直後に、対策を講じたことも大きい。最初の感染者が出た翌日の2月27日には毎年恒例のカーニバルを中止し、3月11日には学校を閉鎖した。2日後には不要不急の旅行を制限し、飲食店、公共施設などを閉鎖している。市民は外出の際にも政府に届け出をすることが求められ、厳しいロックダウンが早期に始まった(NYT)。
さらに海外からの入国者には、空港でPCR検査が実施された。結果が出るまで指定のホテルで待機させ、陰性者は帰宅して2週間の自宅隔離、陽性者は治療を受けることとした。違反者には約5000ユーロ(約59万円)という厳しい罰則もつけている。対照的に1日1万5000人がEUから入国するイギリスではノーチェックで、この国境管理が違いを生んだとABCは指摘する。
EUオブザーバーは、国民にわかりやすく対策を説明した政府の功績が大きいとしており、ロックダウンに対する国民の支持が86%に達し、政府への信頼感が増したと解説している。そのほか、イタリアのように中国関連の製造業がなかったことや、ロンドンやニューヨークのような大都市がなく、多くの島を抱える国だったため感染が広がりにくかったなど、さまざまな理由が指摘されている(ABC)。
◆経済再開 観光に期待も不安は拭えず
コロナ対策の成功で、ギリシャでは5月4日から社会、経済活動の再開が始まっている。今後は、GDPの20%を占める観光業の再開が経済復活のカギになる。世界の感染状況が改善すれば、7月1日より観光客受け入れを始める予定だという(EUオブザーバー)。
ホテルでは、観光客受け入れの準備をしているが、課題は山積みだとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は指摘する。ホテルではソーシャルディスタンシングが求められ、稼働率は通常の半分になる。また、島では少なくとも1施設が、感染者が出た場合の隔離先として確保される必要があるという。ビーチパラソルは10メートル間隔で設置、ビュッフェは禁止で、テーブルも数メートルずつ離す必要があるため、屋外席の増設は必須だ。さらに、観光客が多い島々への、海外からの直行便再開の目途が立っていないのも不安材料だという。
昨年のギリシャはオーバーツーリズムで増え続ける客の制御に悩まされていたが、今年はまったく客がいないことで悩んでいるとサントリーニ島のホテル協会の会長はFTに話し、問題は今シーズンがあるかどうかだとしている。コンサルタント会社、デロイトによれば、2020年を通じて感染が続けば、多くのギリシャのホテルが破綻するとしており、ギリシャ観光業復活は、他国の感染状況に大きく左右されそうだ。
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