製薬会社、ビル・ゲイツが犯人、5Gが拡散……広まるコロナ陰謀論 その心理とは
♦︎陰謀論登場のメカニズムとは
反ワクチン団体や5G反対派など一部が陰謀論を唱えているが、こうした説はコロナ以前からある主張を根幹としている、と豪クイーンズランド大学のデジタルメディアの研究者は語る(ガーディアン紙)。既存の陰謀論がコロナにわかりやすい理由を求める人々の心理にマッチし、広く拡散した形だ。さらに、公式な情報が不足していることも陰謀論に有利に働いた。ウイルスとそれによる感染症の情報を人々は切望しているが、専門家たちでさえまだすべての疑問に答えるだけの見識を得ているわけではない。そこですべてをうまく説明しているかに思える陰謀論が幅を利かせることとなる。
こうした事情に加えて米科学誌のディスカバーは、陰謀論を支持する人々の心理には、自分たちは特別な存在なのだという意識が働いていると指摘する。社会の輪にうまく適合できない人々にとって、陰謀論は自分たちの存在意義を立証するための格好の理由づけになるようだ。社会一般の人々は何の知識もなく群れているだけであり、自分たちだけが陰謀論に気づいているのだという優越感を味わうことができるためだ。
♦︎振り回されないためにできること
ニューヨーク・タイムズ紙は、陰謀論の拡散に加担しないために、誤った情報をSNSでシェアしないことが大切だと説く。信頼性の低い情報と闘い、SNSに依存せず信頼できる人々と直接対話することが大切だ。オンラインの情報を参照する場合は、怪しいURLに注意する(例としてABCNews.comの偽サイトであるABCNews.com.coなど)、文法ミスがある場合は信頼性を疑う、ほかのニュースメディアも同様の内容を報じているか検証する、などが有効だと記事はアドバイスしている。
また、記事によると一部の研究者は、もはやユーザーのレベルではなく、フェイスブックやYouTubeなどの事業者がプラットフォームの垣根を超え、誤情報の拡散防止に協力すべきだと主張している。ニュージーランドのモスクで昨年発生した銃乱射事件では、フェイスブックは襲撃の様子をライブ配信した悪質な動画に対し、近似する映像を検出できる識別子を適用した。これにより映像の一部が再投稿されることを防ぐ仕組みだ。陰謀論のうちとくに悪質な動画に関しては、同様の対処も技術的には可能だと考えられる。
もしも陰謀論者と議論する際には、批判的になりすぎないことも大切だ。ディスカバー誌は、意見を変えさせようとして追い詰めすぎると、かえって彼らの思い込みを強める結果になると注意を促している。何を正しい情報だと信じており、その理由は何なのかなどといった形で、冷静に質問を重ねることが効果的だという。人々の関心が高いコロナ問題だけに、風説の類が後を絶たないようだ。
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