米、マスク着用に反発も 「個人の権利」主張 各地でトラブル

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 新型コロナウイルスの感染者数はいまも日毎に増加するアメリカ。しかしながら、感染のスピードは緩やかになってきていることもあり、5月に入ってロックダウンやビジネス規制を緩める州が続いている。筆者が居住するハワイ州では、新規感染者数が過去3週間ほど5人以下になっていることから、これまでに公園・ビーチ利用、ショッピングモールの再開などが許可されたほか、6月5日からはレストランでの店内飲食も規制つきで許可されることになった。しかし、外出時のマスク着用はいまも義務付けられている。ハワイ州にはアジア系アメリカ人とアジア系移民が多くマスクに慣れているせいかもしれないが、筆者が見た限りではエクササイズ時以外、ほぼ100%の人々がこのルールに従っている。米疾病予防管理センター(CDC)もウェブサイトで新型コロナウイルス感染予防のために顔を覆うこと(=マスク着用)を推奨しており、この状況下では当然のことと思われる。
 
◆コストコのマスク着用ルールで反発
 しかし、アメリカ本土では一部住民がマスク着用に反発し、各地でトラブルが頻発している。CNNによると、米大型卸売店コストコでは5月4日より全店舗内で、2歳以下、または医療上の理由がある場合以外マスク着用を義務付けることを公表。それに対し、一部顧客がコストコのボイコットを呼びかけている。マスク着用義務を「個人の選択の自由を奪う行為」と見る人が多いらしく、「もう会員証を更新しない」「マスクを着けていなかったから差別された」「(マスクを着ける)人々は恐怖に支配されている」などとツイッターに投稿する人も目立つ。なかには、「『医療上の理由があるから』と言えば何も言われない」「私はわざとマスクを着用しないで入店したが、止められなかった」などという投稿をしている人もいる。

 アメリカ人はとくに政府からの「自由の侵害」に対して敏感で、こういう問題が出てくるとすぐに個人の権利を主張する人が現れるのが常だ。それに加え、マスク着用に関する反発についてはそこに新型コロナウイルスをいまもデマ扱いしたり、政府の陰謀だと勘繰る姿勢が見え隠れする。これだけ死者や感染者が出ても、多くの人々がこのウイルスの存在を否定しているのである。アメリカが新型コロナウイルス感染者数と死者数で他国に大きな差をつけて1位であることは、このような一部のアメリカ人特有の姿勢から来ている可能性もある。

 しかし、コストコはもちろん私企業であり、いくら顧客であろうとも、他者が保有するビジネスを利用する際は、そのビジネスが義務付けるルールを守らなければならない。ルールを守りたくなければその店に行かなければいいだけの話なのだが、ここで「権利の侵害」などと声高に叫ぶ人が出てくるところがいかにもアメリカらしい。

Text by 川島 実佳