検査だけではダメ 感染拡大国で足りなかった接触者追跡 新型コロナ
◆検査遅れや人手不足も影響 追跡進まず
そもそも接触者追跡は、集団感染の初期に始めなければ効果は出にくい。ニューヨーク市の場合、1月と2月に検査が進まなかったことから、追跡が不十分となった。感染者が増えるにつれて手が回らなくなり、現在は医療従事者と介護施設や老人ホームで発生した集団感染に対してのみ接触者追跡を行っている。ほかの州でも、感染者を見つけ次第、接触者の隔離を行うことになっているが、感染者が増え続けるなか、限られた人員で追跡作業を行うことがすでに不可能になりつつある。結果として接触者追跡をあきらめ、ロックダウンで感染を抑えるしかなくなっているという(ロイター)。
行政側の不手際で、接触者追跡が上手くいかなかった例もある。イギリスの地方政府には、接触者追跡に幅広い経験を持つ環境衛生の専門職員が合計5000人もいるが、イングランド公衆衛生サービスはこうした専門要員を活用せず、独自のチームで追跡を行っていたという。結局3月中旬に政府が感染を遅らせる方針に転換したため、現在接触者追跡は脆弱なコミュニティを中心に限定的な形で行われている。ある環境衛生の専門職員は、もし最初から地方政府が計画して接触者追跡を行っていれば、もっと感染のカーブを低く抑えられたかもしれないと話している(ガーディアン紙)。
◆追跡に限界も アプリの利用必須か?
接触者追跡の重要性を認識し、本格的に取り組む自治体も出ている。米マサチューセッツ州では、非営利医療機関、パートナー・イン・ヘルスと連携し、接触者追跡と感染者隔離の支援を行うと表明した。民間企業、公衆衛生を専攻する大学生などの協力を得て、1000人態勢で接触者追跡にあたるという。全米でこのようなプログラムを実施するのは同州だけということだ(米ニュースサイト『ホームランド・プリペアドネス・ニュース』)。
もっとも、新型コロナウイルスの場合、無症状感染者や症状が出る前の人からの感染が報告されており、電話や面談を通じた従来の追跡方法の限界も指摘されている。今後は一部のアジアの国々で採用された、携帯電話やアプリなどを使ったテクノロジーによるアプローチも必要になるだろうとKFFは指摘している。
イギリスでは、ロックダウンが緩和された後に感染の再燃を防ぐため接触者追跡が必要になるとされているが、やはり従来のやり方では追いつかないだろうと見られている。現在、英、米、ドイツなどが感染者追跡用のアプリを開発中で、大きな期待が寄せられている(ガーディアン紙)。
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