ゴルフ、銃、大麻が営業可 国・地域で異なる「非常時に不可欠なもの」

AP Photo / Ringo H.W. Chiu

 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の人々に対し、それなしではやっていけない「不可欠」な物は何かを問いかけている。ただしそれは、生存のために本当に必要な物だけに限らない。

 ウイルスの蔓延を遅らせる試みが世界各地で続くなか、各国の当局は、閉鎖せずに継続可能な店舗やサービスの選択を迫られている。また、市民が自宅外に出ることへの制限も行われている。現在、世界人口の5分の1以上が、自宅待機の命令ないしは要請を受けている。

 この状況下において、一つの本質的な問いが多くの人々に投げかけられている。それは、「何が本当に不可欠か?」という問いだ。

 アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカの全地域に当てはまる共通回答として、医療、警察、公共サービス、食料生産、通信に従事する人々は一般的に閉鎖の対象外とされている。

 しかし、それ以外で閉鎖を免れた活動のリストを見ると、そこには国ごとのアイデンティティや、ロビイストの活動の結果が反映されている。

 アメリカの一部の州では、ゴルフ、銃、大麻が閉鎖免除のリストに含まれていることに対して疑問の声が上がっており、とくに銃に関しては、市民の強い反発を招いている。

 多くの地域では、必需品のリストに酒が含まれている。たとえばイギリス政府は、スーパーマーケットにおいてビールやワイン、スピリットが品不足だとの報告を受け、当初は閉鎖免除の業種リストに入っていなかった酒店をただちにリストに追加した。

「『必要不可欠なサービス』の決定プロセスにおいては、社会機能を維持するために何が必要かという法的・政治的な観点に劣らず、文化的な側面も大きいことが、最近の情勢下で明らかになっています」と、オレゴン州立大学の歴史学准教授、クリストファー・マクナイト・ニコルズ氏は言う。

 インドとアメリカの各州では、必須リストのなかに情報技術を含めている。自宅を出られなくなった人々の多くは、ネットでコミュニケーションをとり、映画のストリーミングを鑑賞し、オンラインゲームをプレイすることで引きこもりのストレスを解消しており、世界がいかにインターネットに依存しているかを、あらためて浮き彫りにした。

 カリフォルニア州やワシントン州など、大麻が合法化されている複数の州では、大麻ショップおよび大麻市場のサプライチェーン従事者が「不可欠」と判断された。一部では、外部からの批判をかわすために「医療用の用途」が強調されている。

「大麻法改正を求める国民機構(NORML)」の事務局長を務めるエリック・アルティエリ氏は、メールで以下のように語っている。「大麻は、病気や疾患に苦しむ何百万もの米国民が生産的な日常生活を維持するために安心して使える、安全で効果的な治療手段の一つです。この非常事態下においても各患者たちが大麻にアクセスできることが必要で、まさに必需品です」

 コネチカット州のネッド・ラモント知事は、同州の必須ビジネスのリストに銃販売店を追加した。この判断に対して、銃犯罪の犠牲者の遺族らの間にはショックと落胆が広がった。州知事の報道官を務めるマックス・レイス氏は、「ラモント知事は、商取引を過度に阻害したり、事業者の法的権利を損ねたりしないよう努めている」との見解を示している。

 2012年にコネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校で起きた、26人が犠牲となった銃乱射事件の後に結成された市民グループ「ニュータウン・アクション・アライアンス」は、ここ最近、銃と弾薬の売り上げが急増していることを指摘し、ラモント知事に再考を訴えた。同グループは、銃による事故と殺人、自殺の犠牲者が今後増加すると予想している。

 テキサス州のケン・パクストン司法長官は、3月27日、同州では緊急事態宣言によって銃販売を規制することはできないとの法的見解を示している。

「社会秩序が崩れた場合には、私たちはまず、自分で自分の身を守る必要に迫られます。ですから武器を所持することは、個人の安全にとって非常に重要だと思います」と、テキサス州副知事のダン・パトリック氏は、ラジオのインタビューでコメントしている。

 ペンシルベニア州のトム・ウルフ知事は、3月24日、特別な公式発表を行わないまま銃販売店の再開を許可した。ただしそこでは、顧客と従業員が「社会的距離の確保」やその他の必要な感染予防措置を遵守することを条件に、限られた営業時間内に予約制にて売買を行うと定めている。

 オレゴン大学でプランニング・公共政策およびマネジメント分野の准教授を務めるベンジャミン・クラーク氏によると、現時点では全米を対象にした自宅待機命令は発令されていないため、米国各地で政策に大きなばらつきがあるという。

「結果として、それぞれの土地の文化的・地理的背景を反映した個別のルールが各地に乱立しています。各地でさまざまな政策が混在する現状には、潜在的なリスクがあると我々は認識しています」と、クラーク氏は言う。

 現在パンデミックの被害が最も大きいヨーロッパにおいて、最も厳格なルールを定めているのがイタリアだ。そこでは食料品店や薬局など、市民生活に不可欠な店舗以外はすべて閉鎖されており、3月26日には製造業部門の閉鎖が命じられた。ただし、医療用品などの必需品を製造する工場に関しては、そこで働く従業員の感染予防策をより徹底したうえで、今後も操業が続けられる見通しだ。

 初期には事業閉鎖に消極的だったイギリスも、必要不可欠な事業以外の事業停止命令を出すに至った。レストランや飲食店も閉鎖の対象に含まれる。ただしテイクアウトでの販売は認められており、イギリス市民はいまでもフィッシュ・アンド・チップスその他のメニューを購入することができる。

 フランスでは、ペイストリー、ワイン、チーズの各専門店が、必要不可欠な事業のリストに含まれた。

 イスラエルでは、敬虔なユダヤ教徒らに配慮して、各参加者の間に2メートルの距離をとることを前提に、最大10名までの屋外での祈りの集いを開くことが認められている。また、感染予防のために「社会的距離」を確保しつつ、議会と最高裁判所の前で屋外デモを行うことも許可された。

「社会が不安定な時代には、文化的アイデンティティに即した制度や慣行がきわめて重要な社会ルールとなることがあります」とオレゴン州立大学のマーケティング学教授で、消費者文化を専門とするエイミー・ハフ氏は語る。

 中国では、1月下旬からほとんどの企業と公共施設が順次閉鎖となるなかで、病院、スーパーマーケット、薬局は閉鎖の対象から外れた。封鎖された各都市に食料や消毒剤、医療用品を届けるトラックのドライバーは英雄と称えられた。共産党政権は、ウイルス流行に対する勝利宣言を行い、経済再生のために徐々に規制を緩和しつつある。

 新型コロナウイルスに感染した場合、ほとんどの人は発熱や咳など軽度または中等度の症状にとどまる。しかし一部の患者、とくに高齢者や持病のある人々には肺炎を含めたより深刻な症状をもたらす可能性があり、死に至るリスクもある。

 アメリカでは、各業界の利害を代表するロビイストらが事業の継続を求め、「必要不可欠なサービス」のリスト選定のプロセスに影響力を行使しようと試みてきた。

 コネチカット州知事の報道官であるレイス氏は、「ロビイストらにとっては、またとない稼ぎ時だった」とコメントしている。同氏によると、なかでもひときわ熱心に活動していたのが製造業界とゴルフ場業界のロビイストたちだったという。

 しかし彼らの努力にもかかわらず、コネチカット州では、不可欠な事業のリストのなかにゴルフ場は入らなかった。しかし、アリゾナ州のダグ・デューシー知事は、ゴルフ場をリストに含めた。同州フェニックス市の当局者は、170万人の市民に対し、ゴルフ場、公園、ハイキングコースなどの野外に出て、感染予防に必要な社会的距離をとりながら運動することを奨励した。

 これに対してアリゾナ州内のその他の5都市の市長らは、ゴルフ場やペイデイローン(小口の短期貸し金融サービス)を「必要不可欠」の定義に含めるのは行き過ぎだとして、デューシー知事の決定に反対の姿勢を示している。

 またカリフォルニア州の地元紙「サクラメント・ビー」によると、同州では、建設会社の幹部その他のロビイストらが州の当局者に対し、建築事業を自宅待機命令の対象から外すよう要求した。これを受けて州の保健当局は、すべての建築事業を必要不可欠な業種のリストに含める対応を行った。

 建築業界の振興を担うサクラメント・メトロポリタン商工会議所のエリカ・ビョーク氏は、かつての大恐慌時代と同じように、もし仮にアメリカで最も人口の多いカリフォルニア州において建設事業が中止に追い込まれた場合には、そこから再起をはかることは困難だと話す。

「現在の業界の動きをこのまま止めずに続けることが必要です。それによって、コロナウイルスの混乱が収束した時点で、誰でも必要な建物をすぐに確保できる状態を作れます」

 イギリスと同様、アメリカの一部の州では酒店の営業継続が認められている。ニューメキシコ州もそのなかに含まれているが、実は同州は、人口あたりのアルコール関連死の件数では常に全米トップの位置につけている。

 同州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事の報道官、トリップ・ステリニキ氏によると、同州の保健当局がこの決定を出した背景には、仮にすべての酒店を閉鎖した場合、禁断症状を苦にして緊急医療の支援を求めるアルコール依存症の患者らによって、コロナウイルス対応のための医療リソースが奪われる懸念があったのだという。

 一方、ニューハンプシャー州のクリス・スヌヌ知事は、「生花店」は必要不可欠な事業に含まれるとした。

 その理由について同州のベン・ヴィシュタット報道官は、「生花店は葬儀場にとって欠かせないサービスを提供しているから」と説明している。

By ANDREW SELSKY Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP

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