WHOも利用か 国際機関で影響力を高める中国

Li Xueren / Xinhua via AP

 一方、筆者には、2011年の高速列車事故の際、北京が落下した車両をそのまま土の中に埋めたように、新型コロナウイルスにおける汚点を闇に葬りたいかのような行動を取っているかのように映る。

◆WHOは中国の傀儡機関か?
 新型コロナウイルスによる中国の一連の行動を見ていて、筆者は国際機関で存在感を高める中国を想像できる。

 実は現在、15ある国連の専門機関のうち、国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)、国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)の4つの機関で中国人がトップを務めている。以前も、特許や商標など知的財産の保護を専門とする世界知的所有権機関(WIPO)で次期事務局長選挙が行われ、米国などが推すシンガポール特許庁長官のダレン・タン氏が、中国出身の王彬穎WIPO事務次長を決選投票で破ったが、中国は国際機関でも存在感を高めている。

 そして、今回の新型コロナウイルスにおいては、世界保健機関(WHO)を舞台にその議論が高まっている。WHOトップのテドロス事務局長は、近年多額の支援を中国から受けるエチオピアの出身で、2005年から2012年にかけて保健大臣、それから2016年まで外務大臣を務めた大物政治家で、中国との政治的癒着は十分に想像できる。

 中国は3月上旬、新型コロナウイルスで大きく貢献したとして、日本円にして21億円をWHOに寄付すると発表した。テドロス氏の就任以降、WHOは北京寄りの活動を続けているとの見方もあり、現在のWHOを中国の傀儡機関だと批判する人も少なくない。また、先月には英国の国会議員たちが、WHOが新型コロナウイルスの感染地域を示す地図で、台湾を中国の一部に含めていると批判した。

次のページ 中国は今後さらに国際機関で存在感を高めるか?




Text by 和田大樹