陽性でも無症状者を「感染者」としない中国 封鎖解除で懸念される再流行

Ju Peng / Xinhua via AP

◆検査で判明、無症状者は多数
 無症状者のデータを把握するのは現状困難だ。中国、韓国のように濃厚接触者を症状の有無にかかわらず検査している国では、無症状者の数は増える。一方、欧米では、医療関係者以外で症状のない人には検査を行っていないことが多く、国別の比較は難しいとSCMPは見ている。

 中国と比較できるのは、30万人の濃厚接触者を追跡検査した韓国だという。無症状者のうち、20%以上が発症せずに退院していた。すべての乗員乗客を検査したダイヤモンド・プリンセス号のデータも参考になるとされる。陽性となった712人のうち、334人は無症状だった(SCMP)。ロイターは、自衛隊病院が収容したダイヤモンド・プリンセス号からの患者に関する報告では、感染者104人中33人が平均10日経過しても無症状だったことを紹介している。

 中国、アメリカ、イギリス、香港の専門家による共同研究では、武漢の封鎖前には、軽い、または症状なしの隠れた肺炎が、記録されている肺炎の79%の感染源になっていたと推定されている(SCMP)。イェール大学公衆衛生学部は、無症状者がいたということは、中国から他国にウイルスが入らないために行った、空港など出入国管理のポイントでのスクリーニングは、振り返ってみれば不十分だったと述べている(ロイター)。

◆封鎖解除で再流行? 中国反論
 WHOは、検査で陽性になった場合、症状の有無にかかわらず感染者としてカウントしているが、中国は2月7日に分類のガイドラインを変え、症状の出た人のみをカウントするようになった。2月末までの検査で陽性となった人のうち、4万3000人がすぐに発症せず、当時の感染者数約8万人には含まれていないという。ロイターは、中国は移動規制を解除しようとしているが、湖北省封鎖の終了は、潜伏期にある多くの感染者を放出することになりかねないと懸念を示している。

 これに対し中国の専門家は、無症状者からの感染拡大の可能性は認めるが、「確定患者」としてカウントされていなくても、中国では陽性になれば症状がなくとも14日間隔離されていると主張する。3、4週間という例外もあるが、患者は2週間以内に発症する。中国のほとんどの地域ではここ2~3週間、確定例は出ておらず、無症状患者はすでに存在しないと反論している(環球時報)。

 ロイターは、それでも公式データに無症状者を含めないのは中国の透明性への関与に疑問符をつけるとしている。しかし中国の専門家は、イタリアやアメリカなどは無症状者に検査をしていないと指摘。中国は感染の第2波を抑える段階だが、海外での感染は悪化しており、欧米は無症状者の発見と隔離を強化するべきだと述べている(同上)。

Text by 山川 真智子