新型コロナウイルスとイスラム過激派テロ グローバル化社会の負の側面について考える
◆通信技術のグローバル化によるリスク
筆者は、テロ問題を中心とする国際安全保障の研究者だが、100の国・地域にリスクが拡散したということを聞いて、数年前に中東を中心に猛威を振るったイスラム国によるテロを思い出す。
イスラム国などのイスラム過激派には、世界100ヶ国あまりから3万人以上の外国人戦闘員がシリア・イラクに流入したと言われる。そして、欧米や東南アジアなどでは、いわゆるイスラム国からの「帰還戦闘員」によるテロの脅威が続き、現地当局は依然として強く警戒している。
こういった外国人戦闘員たちは、ネット空間にあふれる過激思想、イスラム国戦闘員とのSNS上でのやり取りを通して過激化し、そのリスクはCOVID-19と同じように、世界100ヶ国あまりに拡散した(もちろんそのほかの国にもリスクが拡散することもある)。
また、欧米社会で自己過激化するテロに、欧米政府は苦慮してきた。国際テロ組織アルカイダはインターネットをフルに活用し、イスラム国はフェイスブックやツイッターなどSNSを活用し、世界中の信奉者たちに欧米への攻撃を呼びかけてきた。
◆グローバル化社会におけるリスク
単純な比較はできないが、イスラム国問題もCOVID-19問題も、リスクが拡散し、世界100ヶ国に影響を与えたという部分では共通している。テロは思想、感染症はウイルス、両方とも見えない動きで、ヒト、情報、カネ、モノの国際移動は、我々が想像する以上のスピードで拡散している。
政治や経済、社会、文化のグローバル化は、多くの利便性と恩恵を我々に与えてきた。しかし、それによるリスクも当然ながら存在する。COVID-19によって、現在、各国はいかに感染拡大を防ぐか、感染者を治すかに尽力しているが、グローバル化によるリスクというものを日本は国家安全保障の視点からもっと考える必要があるだろう。
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